モンテベロ Monte Bello

山の中の本拠地

モンテベロとは、何よりも土地の個性を反映したワインである。サンタ・クルーズ山脈内の高地にあって、地下に破砕石灰岩とフランシスカン・ロックが横たわるこの土地からは、他に類のないワインが生まれる。この畑において収量を非常に低く抑えてやれば(エーカーあたり2トン以下)、大いなる意義、深み、複雑性、熟成能力を備えたワインを産み出すことができるのだと我々は信じている。ただしそれは、持続可能な方法での耕作をした場合に限られる。畑で人がでしゃばることは控えるようにする。もともとの生態系を生かし、保存するようにしてやるのだ。そのための技術が、カヴァークロップや総合防除(IPM)であり、ブドウ樹は守られながら育てられている。天然素材のものしか、ブドウ畑には持ち込まれない。モンテベロの畑は、現在有機栽培の認証プロセスの最中にある。

冷涼な微気候

モンテベロの畑は、太平洋から24キロしか離れておらず、カリフォルニアにおけるカベルネの産地としては最も冷涼な、サンタ・クルーズ・マウンテンズAVAの域内にある。我々のワイン造りとは、この特異な畑が自らワインを産み出すのを手助けすることであり、セラーの中で特定のスタイルへと誘導していくことではない。この目的を果たすために、自然かつローテク、人為的介入を避けたワイン造りの技術を組み合わせて使う。すべての品種、すべての区画を別個に仕込むこと。天然酵母だけを用いて、小型タンクで発酵させること。各々のロットを天日乾燥させたアメリカンオーク樽に移し、天然乳酸菌でのマロラクティック発酵を100%行うこと。その過程で何度となく、各々のロットを試飲し、個別に品質を鑑定する。この選別のプロセスこそが、モンテベロを産み出す上で決定的な役割を果たすのだ。モンテベロは、常に畑の個性を映すワインで、醸造家の気まぐれによって造られるものではない。

伝統的ボルドー・ブレンド

モンテベロ赤はしばしば、アメリカの「一級シャトー」と呼ばれる。カベルネ・ソーヴィニョンが主体となる古典的なボルドー・ブレンドにおいて、この国における最高の存在だからだ。アッセンブリッジ(ブレンド)の過程において、テスト・サンプルを数限りなく試飲しながら、どれだけの量のメルロ、プティ・ヴェルド、カベルネ・フランが最終ブレンドに含めるかが決められる(品種によってはゼロの年もある)。すべての品種が、ワインの風味および骨格に貢献している。カベルネ・ソーヴィニョンは一般にカシス風味と強いタンニンを、メルロはプラムのような個性と柔らかみを少々、プティ・ヴェルドは濃い色と土臭さを、カベルネ・フランは香り高さとかすかなスパイス風味をそれぞれもたらしてくれる。

どのヴィンテージも同じではないのだが、モンテベロ赤はいかなる年でも一貫して並外れたワインであり、見事な骨格、複雑性、バランスを備えている。熟成能力についても、数十年にわたって優雅さと優しさを発展させていくことがよく知られているのだ。

特異なるカリフォルニアのブドウ畑

モンテベロの畑は、海抜400mから820mの高さにある。土壌も独特で、グリーンストーンと粘土の混じった土が、破砕石灰岩の上に載っているというものである。ナパやソノマといった、有名なカベルネの生産地域には石灰岩は存在していない。だが、モンテベロの土壌組成に独自かつ重要な影響を及ぼし、ひいてはワインの際立った個性にもつながっているのがこの石灰岩なのだ。標高の高さ、冷涼な気候、土壌の性質が組み合わさることによって、非の打ち所のないバランスを供え、長い期間の熟成を宿命とするワインが生まれる。その特徴はといえば、しっかり強い酸と、常に感じられるミネラル風味である。

初ヴィンテージは1959年

1959年、スタンフォード研究所で働く4人の研究員たちが、モンテベロ・リッジの頂上に土地を買った。もともとは、19世紀末に初めてブドウが植えられた土地だった。最初の数年、醸造責任者としてワイナリーを取り仕切っていたのはデイヴ・ベニオンである。それから三年間、少量とはいえ当時のカリフォルニアで屈指のワインを生産したのち、1962年に4人の共同経営者たちはワイナリーを再設立する。この年に初めて、リッジ・モンテベロが商業ベースで発売された。医師であったオセア・ペローネが1892年に建てた石造りのワイナリーを、4人は当時の所有者であったトレンタデュー家から買い取って、そこで醸造を行うようになった。そして1969年、ポール・ドレーパーがリッジに参画する。ドレーパーは翌年から赤ワインの生産を引き受け始め、1971年に醸造責任者に就任、その地位のまま現在に至っている。デイヴとフランのベニオン夫妻、ヒューとスーのクレイン夫妻、チャーリーとブランシュのローゼン夫妻、そしてハワード・ゼイドラーから成る創立者たちは、ベイエリアの素晴らしい眺めを楽しむ週末の趣味が、世界クラスのワイナリーへ育っていくとは夢にも考えていなかった。だが、地球上のひとかけら、紛れもないこの土地から生まれる際立ったワインのおかげで、その夢は実現したのである。

少量生産される卓越したシャルドネ

モンテベロの畑には、わずかな量だがシャルドネも植わっており、そこから二種類のワインが造られている。毎年生産されるエステート・シャルドネと、優れた年にのみ造られる白のフラッグシップ、モンテベロ・シャルドネである。リッジの造る白ワインはこのシャルドネのみで、全体生産量の数%を占めるにすぎないのだが、世界中で高い評価を受けている。モンテベロの冷涼な気候と石灰岩土壌――ブルゴーニュと同じ――を考えれば、ここで偉大なシャルドネが生まれないはずはない。事実、しっかりとした酸と強いミネラル風味をたたえたエレガントなスタイルなのだが、豊富な果実味とアメリカンオークの風味が、ブルゴーニュとは異なる喜びを与えてくれもする。リッジのシャルドネは若くから楽しむことができるが、数年の瓶熟成によって見事に花開く。