連載コラム Vol.308

ジンファンデルの国際会議「アイ・アム・トリビドラグ」

2017年6月30日号

Written by 立花 峰夫

ジンファンデルの起源は長らく謎に包まれていた。ミステリーが解明されたのは2002年。DNA鑑定によって、クロアチアのツールイェナック・カシュテランスキーという土着品種がそのルーツでだとわかった。この発見に至る経緯については、下記のコラムをご参照いただきたい。

【ジンファンデルの起源を求めて】
http://www.ridgewine.jp/column_main10.html
http://www.ridgewine.jp/column_main10_2.html

この歴史的発見からの15周年を記念して、去る4月28日、クロアチアの町スプリトにおいて、「アイ・アム・トリビドラグ」という国際会議が開かれた。トリビドラグは、クロアチアにおけるジンファンデルの別名で、ツールイェナックよりもこちらの名称のほうが古い(ほかにクロアチアには、プリビドラグという別名もある)。会議の主催者は、2002年にツールイェナックの樹を発見したザグレブ大学のふたりの教授、エディ・マレッチ博士とイヴァン・ペジェッチ博士である。ふたりが発見した樹をDNA鑑定してジンファンデルとの同一性を証明した、UCデイヴィスのキャロル・メレディス名誉教授、巨大なブドウ品種辞典『Wine Grapes』の共著者であるジャンシス・ロビンソンMWとブドウ遺伝学者のホセ・ヴァラーモズ、「ジンファンデルのゴッドファーザー」との異名を取る醸造家ジョエル・ピーターソン(レイヴェンスウッド)、そしてリッジの栽培責任者であるデイヴィッド・ゲイツらが、会議に参加して発表を行った。

2002年の発見当時、クロアチアにおけるツールイェナック/トリビドラグの畑はわずか25ヘクタールだったそうだが、この15年間で100ヘクタールまで増えた。とはいえ、この黒ブドウが圧倒的なボリュームを占めているのは、カリフォルニアとイタリアである。カリフォルニア州にはジンファンデルが、2015年時点の統計で18,782ヘクタールが植わっており、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニョンに次ぐ面積になる。イタリアでは、プリミティーヴォの名前で南部のプーリア州を中心に栽培されており、イタリア全土での合計栽培面積は、2010年時点の統計で12,234ヘクタールある。

なお、今回の会議においては、クロアチアの南、同じアドリア海に面するモンテネグロからの出席者が、ジンファンデルの起源はクロアチアではなく、モンテネグロだと主張する一幕もあったという。モンテネグロでは、この品種はクラトシヤ(kratosija)と呼ばれている。

なお、UCデイヴィスのキャロル・メレディス名誉教授は、現在ナパ・ヴァレーのマウント・ヴィーダーで、ワイン造りを行っている。彼女が夫と造るジンファンデルのワインは、発見者としてのこだわりなのだろう、ラベルに「トリビドラグ」という品種名表示がなされている。
2013年6月以前のコラムはこちらから