連載コラム Vol.361

リッジが造るピノ・ノワール

2020年3月16日号

Written by 立花 峰夫

前回のコラムで、リッジが2018ヴィンテージから生産を開始した新しいシャルドネ、「コラリトス」についてお伝えしたが、このエリアからの新ワイン、実はシャルドネだけではない。同じ2018ヴィンテージ、同じコラリトス地区のガリ・ヴィンヤードから、ピノ・ノワールの生産も開始しているのだ。リッジの60年近い歴史の中で、ピノ・ノワールを過去に生産したのはただの一度きり。1971年に、買いブドウから造ったのみである。それから47年ぶりに、ピノ・ノワールが仕込まれたことになる。

コラリトス地区のガリ・ヴィンヤードは、リッジの本拠地モンテベロの山から、南へしばらく下った、サンタ・クルーズ・マウンテンズAVAの境界線近くに位置する。畑は、太平洋からわずか10km弱の距離で、霧の影響を強く受けるために、冷涼なモンテベロの畑よりもさらに涼しいテロワールである。モンテベロの山が位置する、サンタ・クルーズ山脈内にも優れたピノ・ノワールの畑は複数存在するが、サン・アンドレアス断層の東側、少し内陸に入ったところにあるモンテベロの畑は、ボルドー品種が完熟する分、ピノ・ノワールには少し暖かすぎる。その点、ガリ・ヴィンヤードは、ピノ・ノワールの栽培に最適な気候である。

筆者は2月末から3月上旬にかけて、カリフォルニアのピノ・ノワールの産地を、州を縦断するように訪問して回った。ソノマ・コースト、アンダーソン・ヴァレー、ロシアン・リヴァー・ヴァレー、カーネロス、サンタ・クルーズ・マウンテンズ、サリナス・ヴァレー&サンタ・ルチア・ハイランズ、サンタ・バーバラなど、秀逸なピノ・ノワールを安定して生む産地が、今やカリフォルニアには多数あり、それぞれが個性のあるワインで競い合っている。そのスタイルも、非常にタイトでテンションのあるものから、濃密な果実味をもつ豊満なものまで幅広く、掘り下げると実に面白い。その百花繚乱の状況に、このほどリッジが満を持して加わってくれたことを、とても嬉しく思う。

リッジが造るコラリトスのピノ・ノワール、初ヴィンテージである2018が、日本には5月末に到着する予定である。この新しい赤ワインについての詳細は、入荷時期などの詳細が決まり次第、またこちらでお伝えさせていただくので、ご期待とともにしばしお待ちいただきたい。

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