連載コラム Vol.357

リッジとアメリカンオーク その2

2020年1月15日号

Written by エリック・ボーハー

リッジのCOOにして、モンテベロ・ワイナリーの醸造責任者であるエリック・ボーハーが、引き続きアメリカンオークについての議論と、リッジにおけるその利用について語ってくれた。

エリック・ボーハー: リッジは、1974年に実験を行うべく、アメリカンオークとフレンチオークの新樽を購入した。アメリカンオークの樽はオザーク産のもので、供給過剰の状況にあったとある樽製造業者が、7年間天日乾燥した材木を使っていた。この樽板は、ポール・ドレーパーが選び、バーボン樽の容量で組み上げて、注意深く焼きを入れたものだ。デンプトース社製のフレンチオーク樽は、一樽あたりおおよそ50ドルで、アメリカンオークのほうは35ドルだった。両社の価格の開きは、現在ほど激しくなかったのだ。だから、もし当時のポールがリッジのワインにとって、フレンチオークがよりよき選択だと感じていたならば、そちらを選んでいただろう。2種類のオーク材の価格差は、アメリカンオークを選ぶという決断に、何ら影響を及ぼしていない。また、モンテベロの畑が生むタンニン豊かなブドウは、ボルドー産に似たワインを生むため、独自の異なる味わいを産み出す上ではアメリカンオークのほうが適していた。ポールもリッジの創業者たちも、ボルドーの模造品を造るつもりはなかったのだ。アメリカンオーク材はフレンチオーク材と比べて2倍木理が詰まっているから、スパイス風味や木材由来の糖分を多く含んでおり、それがゆっくりと抽出されてワインのボディを満たしてくれる。強いタンニンを含むモンテベロの場合、アメリカンオークの甘味がタンニンをマスクしてくれるおかげで、ワインがより官能的かつエキゾチックになるのである。もうひとつ、アメリカンオークの美しいトースト風味は、カベルネ・ソーヴィニョンにみられる青臭さを覆い隠してくれるという面もある。モンテベロの山は冷涼だから、そこで栽培されるボルドー品種は、しばしば青臭い風味を要素として含んでいる。アメリカンオークは、ワインの角を落とし、タバコやオリーヴの香りをオークのトースト風味や香りの中に統合していく上で、鍵となる要素なのである。

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