連載コラム Vol.347

リッジ・エステート・カベルネ ― 選ばれた区画から生まれるモンテベロのエレガント版 その2

2019年7月12日号

Written by 立花 峰夫

このほど、モンテベロ・ワイナリーの醸造責任者であるエリック・ボーハーが、モンテベロと同じ畑から生まれるエステート・カベルネについての優れた解説文を、アメリカ本国で顧客向けに発行されているニュースレターに掲載した。前回と今回で、その文章を訳出する(全2回中の第2回)。

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続いての年月で、カベルネ・ソーヴィニョンの区画がいくつか追加で植えられた。加えて、メルロの1区画については、穂木をカベルネ・ソーヴィニョンに接ぎ変えている。こうして、収穫されるカベルネ・ソーヴィニョンのトン数が増加した。2008年には、再び品種名の表示を開始し、また「エステート」(自社畑)とラベルに記すことで、そのワインがモンテベロの畑から生まれていることを明確に伝えるようになった。それからも、このワインのスタイルについての改良を続けてきており、それはブドウ畑の各区画について、エステート用かモンテベロ用かを、よりはっきりと区別するようになったことによる。

モンテベロ・ワイナリーの破砕場についても、2009年に設備を刷新し、ブドウの受け入れ、除梗、選果がより優しく行われるようになった。おかげで、発酵タンクにおけるタンニンの管理水準が向上してくれている。

ここは本物の山の畑であり、どこを探しても平坦な土地など見当たらない。45の区画が、標高375mから808mにかけて広がっており、波打つような斜面や段々畑は、下層土の深さも異なっている。こうした変動要素のすべてによって、熟した実だけを選んでの複数回の摘み取りや、ロット別のアルコール発酵、注意深い抽出が必要になってくるのだが、それは最初からふたつのワインのスタイルを確固たるものにするためである。アルコール発酵が終わると、すべてのロットが樽に移され、天然乳酸菌でのマロラクティック発酵が始まる。そののち、モンテベロとエステートは、ブラインド・テイスティングによってそれぞれのロットから丁寧にブレンドされる。このブレンドの過程において格下げが行われるのだが、それはモンテベロ、エステートの双方がそのヴィンテージのまさに最良のロットからのみ造られるようにするためだ。希なことではあるが、生育期間の天候によっては、境界線上にあるいくつかの区画がエステート用からモンテベロ用に、あるいはその逆方向に移動することもある。ブレンドが終わると、ふたつのワインはアメリカンオークの樽に戻され、さらに熟成が続けられる。生の卵白やゼラチンといったタンニン清澄剤を使用するよりも、樽に長い期間入れておくほうが望ましい。瓶詰め後、エステートについては発売までさらに6〜8ヵ月のあいだ熟成を続ける。発売直後から魅力的なワインではあるものの、概ね10〜15年の瓶熟成が可能である。モンテベロ同様、時を経ることで味わいが発展し、はるかに複雑になるのだが、熟成風味の頂点に達するのがモンテベロより早いのだ。

――エリック・ボーハー(COO&醸造責任者)、2019年2月
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