連載コラム Vol.339

ジョン・オルニーによるハーヴェスト・レポート2018

2019年3月15日号

Written by 立花 峰夫

2018年のヴィンテージについては、すでに大塚食品の黒川信治氏によるレポートがリアルタイムでアップされているが、その後モンテベロ・ワイナリー、リットン・スプリングス・ワイナリーの各醸造責任者によるレポートが本国のウェブサイトに発表された。今回は、リットン・スプリングス・ワイナリーの醸造責任者ジョン・オルニーによるハーヴェスト・レポートを訳出する。

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何度か早めの収穫の年が続いたあと、2018年のハーヴェストは9月4日に始まったのだが、これはソノマ郡にあっては平年並みの開始日であった。最初のブドウは、リットン・ウェスト(西部)にあるジンファンデルの小さな区画のものである。天然酵母での発酵はゆっくりとしか始まらなかったので、酵母を「目覚めさせる」ためにタンクを暖めた。9月の第2週になる頃には、自社畑以外のふたつの契約栽培畑であるボートマン農園とブキニャニ農園のジンファンデルが収穫できる状態にになった。色とタンニンは豊富で抽出も早く、2、3日のマセレーションで十分な量が得られている。天候条件は、収穫期間を通じて理想的なものであった。とりわけ、暖かいが極端に暑くなることのない日々のおかげで、ブドウの成熟期間が延び、例年ほど慌ててブドウを収穫しなくてもすんだのである。

事実、合計で7週間以上にわたった2018年のハーヴェストは、リットン・スプリングスにおける最長のものとなった。おかげでよりリラックスしたリズムで仕事に打ち込むことができたものの、10月が近づくと雨が降る可能性も増す。その可能性は現実となり、10月最初の週末には、ソノマ郡に40ミリ弱の雨が降った。幸い、ブドウ畑の75%以上はすでに収穫済みであった。残りのブドウについても、収穫クルーが区画別に精査し、雨のダメージを受けた房をすべて切り落としている。

2015年には、リットン・ウェスト(西部)で多くの区画を植え替えた。2018年はその時に植えた若樹から少量の果実が初めて取れた年になる。その中にあって、ジンファンデルの近縁種であるトリビドラグとツールイェナック・カステランスキー(訳注:ともにクロアチアにおけるジンファンデルのクローン)の実験区画のものがとりわけ有望で、焦点のあった赤系果実と生き生きとした酸味を見せていた。

多くの点において、2018年はゴルディロックスな年だと言えるだろう(訳注:イギリスの童話『ゴルディロックスと3匹のクマ』にちなむ表現で、欠点のない理想的な状態を指す)。収穫の開始は早すぎることも、遅すぎることもなかった。収量も同様で、少なすぎることも多すぎることもない。天候は冷涼すぎず、暑すぎず。総じて品質は極めて有望で、これからの年月、このヴィンテージから生まれるワインがおおいに楽しみである。

-ジョン・オルニー(COO兼リットン・スプリングス・ワイナリー醸造責任者)
2013年6月以前のコラムはこちらから