連載コラム Vol.338

モンテベロ2010が『Decanter』誌のパネル・テイスティングで高評価

2019年3月1日号

Written by 立花 峰夫

イギリスが誇る権威ある月刊ワイン雑誌『Decanter』は、トップ・プロをパネルとしたテイスティング記事を毎号掲載している。2019年2月号のテーマは、「カリフォルニア産カベルネ・ソーヴィニョン2010年ヴィンテージ」。誌面に掲載された約30銘柄のレヴューのうち、リッジのモンテベロ2010はその冒頭、「卓越 Outstanding」に選ばれた2銘柄のひとつとして、95点を与えられた。

2010年は、いわゆるカリフォルニアらしい生育期間ではなかった。春から夏にかけてずっと冷涼で、ブドウの開花、収穫が例年より遅くなった年である。それにも関わらず、8月の末には極端な最高気温を記録した日が数日あり、ブドウの日焼けというダメージを被った畑も数ある。だが、総じていえば気温が低かったヴィンテージで、典型的なカリフォルニアをイメージさせる「太陽のワイン」は生まれなかった年だといっていい。近い年を挙げるとすれば、1998年になるだろうか。

だが、リッジのモンテベロは、冷涼なヴィンテージにあってもその魅力を十分に開花させる。もともとが山中の高い標高の畑のワインだから、ナパの一部のカベルネのような高い熟度は要求されない。1998もそうだったが、こうした難しい年にこそモンテベロの真価が発揮される。「ハーブの風味があるが、青臭いわけではない」という、パネルのひとりであるスティーヴン・ブルックの言うとおり、モンテベロの2010は抑制がきいていながら、その魅力を遺憾なく発揮しているワインである。冷涼なシーズンであったため、収穫時期は遅く、10月初旬から11月頭まで続いたが、その品質とスタイルはフランス・ワイン贔屓の人々に、強く訴えかけるものである。

ワイン評価サイト『Vinous』を主催する評論家アントニオ・ガッローニも、モンテベロ2010年を高く評価する識者のひとりだ。ガッローニは、2018年5月に発表した記事『私の人生を変えた10銘柄のワイン』のひとつに、モンテベロ2010年を挙げ、97点+を与えてくれている。ヨーロッパ的な味覚をもつガッローニにとって、冷涼な2010年のモンテベロは懐へと強烈に入る出来映えだったのだろう。
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