連載コラム Vol.337

48名のマスター・オブ・ワインがモンテベロを訪問

2019年2月15日号

Written by 立花 峰夫

2018年10月21日、昨年のハーヴェストが終盤を迎えた土曜日の宵に、16カ国から48名ものマスター・オブ・ワインが、一挙にモンテベロ・ワイナリーを訪問した。マスター・オブ・ワインとは、イギリスのマスター・オブ・ワイン協会が認定する世界最難関のワイン資格であり、その保持者は世界に380名しかいない。モンテベロ・ワイナリーに、高名なワイン評論家やマスター・オブ・ワインがやってくるのは珍しいことではないものの、これだけ多人数のマスター・オブ・ワインの訪問を受けたのは初めてであった。

この訪問は、カリフォルニア・ワインの生産者団体であるワイン・インスティテュートがマスター・オブ・ワインだけを対象に主催した「カリフォルニア・ドリーミング」ツアーの一環としてなされたものである。ツアーは10日間にわたって、南のサンタ・バーバラから北のナパ・ヴァレーまでを縦断していくという贅沢な旅で、モンテベロを訪れたのは旅程の4日目にあたる。

会長のポール・ドレーパーと、モンテベロ・ワイナリーの醸造責任者エリック・ボーハーがワイナリーのツアーを行ったあと、そこにリットン・スプリングス・ワイナリーの醸造責任者であるジョン・オルニー、栽培責任者であるデイヴィッド・ゲイツが加わっての試飲セッションが、テイスティングルームで着席のもと行われた。リットン・スプリングスについては2013と1999、ガイザーヴィルについては2013と1995というミニ垂直のあと、この夜のクライマックスは1965年にまで遡るモンテベロ赤の垂直試飲であった(2015、2005、1995、1985、1975、1965)。筆者も、大塚食品の黒川信治氏とともに、バックヤードでワインの抜栓、コンディションチェックをするという僥倖にありついたのだが、1975、1965といったヴィンテージが飲み頃の絶頂にありつつも、まだこの先がありそうな状態だったのは驚きであった。

試飲のあとは、シリコン・ヴァレーからサンフランシスコ湾までの夜景を一望できる場所に設けられた、特設テントでのディナー。ここでは食事を締めくくるデザート・ワインとして、1971年産のロダイ・ジンファンデル・エッセンスが供されている。こちらも、50年近い歳月によって角のとれた優しい甘みをもつ、偉大な甘口であった。
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