連載コラム Vol.336

醸造責任者 エリック・ボーハーがアメリカンオーク、石灰岩土壌、カベルネ・フランなどについて語る その2

2019年2月1日号

Written by 立花 峰夫

以下は、2018年12月にリッジの米国公式サイトに投稿された、モンテベロの醸造責任者 エリック・ボーハーによる表題のテーマについてのコメントである(全2回の第2回)。

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4. ブレンドに用いるさまざまな品種に、求めているものは何でしょう。

――カベルネ・ソーヴィニョンはワインの骨格において背骨をなし、黒系果実をもたらしてくれる。メルロもかなりの程度において、カベルネのように骨格を構成しうるが、そのタンニンはより艶々としていてヴェルヴェットのようである。言うならば、メルロのタンニンはキメが細かいのだが、カベルネのそれはもっとチョークのようで粗いのだ。メルロは、味わいの中盤を豊かな肉付きによって補ってくれる。カベルネ・フランは中ぐらいのボリュームのワインになり、色の濃さも中ぐらい、他の品種よりも優雅である。アロマティックなブドウで、とてもエキゾチックでジャムっぽいところはジンファンデルに似ている。ジュニパー・ベリーやユーカリを思わせる甘いハーブの要素もある。少量のブレンドがなされると、モンテベロに興味深いアロマをもたらしてくれる。プティ・ヴェルドは、かなり強健で肉付き豊かな品種だ。最も色が濃く、タンニンもまた最も強い。ジンファンデルにとってのペティト・シラーのように、プティ・ヴェルドはカベルネに深みと口当たりの良さを加えてくれる。花とともに野獣肉の風味があるブドウで、フェンネルやソーセージの風味を見せるシラーを、私に少しばかり連想させてくれる。かなり野性的なワインなのだ。栽培するのも発酵させるのも難しいが、すべてが上手くいけば、力強いブレンド品種である。


5. 毎年、何か一貫したものを求めていますか。

――自然は、少なくとも私が経験した25ヴィンテージにおいては、一貫したものではなかった。我々が造っているのは、自然の現れである。それぞれの年の生育期間が、ワインの個性に大きく影響する。それをいくらかでも均すため、ブレンドを行っているし、その年の原材料を注意深く選び、モンテベロの畑の個性を最も明瞭に示すワイン、偉大なモンテベロのスタイルを表したワインを造ろうとはしている。毎年、その生育期間に応じて各品種の割合は変化するし、どの品種、どの区画が最も輝くかも変化する。我々の畑は、山の4カ所に分かれていて、それぞれ微気候が異なっている。我々が直面する気候の変動要素を鑑みると、毎年概ねひとつかふたつの微気候が他よりも条件がよく、ブドウがよく熟してくれ、それがブレンドにおいて選ばれる優れたワインとなる。年によっては、山の4カ所すべてが優れていることもあるが、ほとんどの年においては中腹の畑と山頂の畑では結果が異なる。すべては、冬の間にどれだけの雨が降ってくれるか、夏にどれだけの熱が得られるか、あるいは夏に逆転層が生じて夜温が高くなるかによっている。こうしたすべての要素が、成熟の力学に変化を及ぼし、ひいては果実の品質に影響するのである。

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