連載コラム Vol.334

2018年ハーヴェストレポート その2

2018年11月2日号

Written by 黒川 信治

2018年10月25日に最後のプレスを行い、2018年のハーヴェストが終了した。

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2018年の生育期間を振り返ってみる。
2018年の新年は平年並みの気候で始まったが1月後半に気温が上がり始め2月上旬に25℃を超す春のような暖かい日が訪れた。2月はほぼ雨が降らなかったが、3月に入ってからは、気温も落ち着き、平年をやや下回るものの雨は降っている。そして、3月下旬に再び30℃前後の暖かい日が数日続いた。
4月は平年並みの降水量と気温、5月はやや平年に比べ低めの気温で、アッセンブラージュに参加するためにモンテベロを訪れたGWの頃は例年に比べかなり寒く感じた。
6月も低めの気温であったが、7月には、気温も上がり、生育期は少し遅れを取り戻す。8月は、ソノマでは30℃を超える日々が続いたが、モンテベロでは25℃前後で30℃を超す日がほぼなかった。総じて穏やかな気温でヒートスパイクといわれる40度を超える日がほとんどなかったのも2018年の特徴の一つであった。

9月のレーバーデーあたりから本格化し、ほぼ休むことなく続いた収穫は10月18日にトーレヴィンヤードの3か所のオールド・ヴァインをもって終えた。

雨と無縁であった2018年ヴィンテージであったが、ジンファンデルの収穫の大半を終えた10月1日に雨がふった。
ソノマでは1インチを超え、その後の糖度上昇に若干の影響を与え、低糖度で収穫をしたブロックも見られた。一方、9月末から糖度の上昇が気になり始めたモンテベロでは、もう少し降ってほしいと思う程のお湿りにもみたないわずかな雨で影響は全く無かった。

総じて6月以降、雨がほぼ降らなかった年であったが、10月1日の雨を境にエリアによって若干の明暗が分かれたヴィンテージとなった。

発酵に関しては、ジンファンデルはスムーズに推移したが、カベルネがスローであった。 この発酵速度との相関は定かではないが、カベルネのタンニンが非常にしっかりした年で、プレスのタンニンが強烈で、ほぼすべてのプレスをフリーランに戻すことなく、取り分けたところも今年のもう一つの特徴であった。

前日にタンクからジュースを抜いて、夜の間、ポトポト滴るワインを集めたフラクションをRIDGEでは「タンクドレイン」と呼んでいる。通常、このフラクションはいつも一番おいしいところであるが、今年はそのタンクドレインでさえ、タンニンが強くベースのワインへほとんど戻さなかった。

他の品種では、乾燥して穏やかな気温であったこともあり、カリニャン、ジンファンデルがきれいに成熟した果実でよいワインになっている。

まだ、タンクで一次発酵を続けているロットもあり、全ての発酵が終わった時点での出来を見ることが楽しみなヴィンテージとなりそうである。

2018年11月1日
黒川信治

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