連載コラム Vol.324

カリフォルニアのワイナリー数の変遷

2018年3月1日号

Written by 立花 峰夫

リッジ・ヴィンヤーズの創設は1962年。今年で57年目のシーズンを迎える。ワインのふるさとヨーロッパでは、創設から数百年というワイナリーも珍しくないから、50年程度の歴史など取るに足りないもののように思われるかもしれない。しかし、アメリカ/カリフォルニアという新しいワイン産地においては、50年を超える歴史があれば、「老舗」を名乗れる資格が十分にある。なお、リッジの前身であるモンテベロ・ワイナリーは、1892年に初ヴィンテージを発売しているから、そこから数えるならば120年を超える歴史を持つともいえる。

過去50年、カリフォルニアやアメリカのワイナリー数はどれぐらい増えてきたのだろうか。カリフォルニアの生産者団体であるワイン・インスティテュートが、公式ウェブサイトでワイナリー数の変遷を一覧表で発表してくれている。

https://www.wineinstitute.org/resources/statistics/article124

表は1940年から始まっているが、1980年より前はとびとびになっているので、リッジの創設年である1962年の数字はない。近いところで1965年の値を見てみると、カリフォルニアには232のワイナリー、全米には424のワイナリーがあったと書かれている。想像以上に多いようにも思われるが、その後の爆発的なワイナリー数の増大を見ていくと、この数字がいかに少ないかがわかるだろう。上昇カーヴの勾配が最初にぐっと上がるのが、1970年代の後半である。1976年におきた「パリスの審判」による歴史的勝利によって、ワイナリー設立ブームが起きたのがこの頃。1975年のカリフォルニアのワイナリー数が330なのに対して、1980年には508まで増えている。これが10年後の1990年には807となり、さらに10年後の2000年には1,450となる。シリコン・ヴァレーの好景気に支えられ、21世紀に入って以降もワイナリー数は急上昇を続け、2010年には3,364、2016年には46,53まで増えている。1965年からの50年間で約20倍になった計算だ。全米のワイナリー数も、2016年に11,496を数えており、ほぼ同様の上昇カーヴを描いてきている。

リッジの名声は、創立から間もない1960〜1970年代にはすでに確立されていたが、それを今日まで保ち、高め続けることがいかに難しかったかが、この数値の変遷からはうかがえる。カリフォルニアだけを見ても、競争環境はかつての20倍以上になっているのだ。50年前に名声を得ていたカリフォルニアのワイナリーで、今日までそれを維持できているところは決して多くない。
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