連載コラム Vol.322

モンテベロ2014の瓶詰め

2018年2月1日号

Written by 立花 峰夫

リッジのフラッグシップであるカベルネ・ブレンド、モンテベロの2014年ヴィンテージがアメリカで昨秋発売された。以下は、2016年7月にリッジの本国公式ブログで発表された、このワインの瓶詰めについての文章である。

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リッジでは常に、最小限の人為的介入で手造りされたワインを世に出していて、それを大いなる誇りとしている。この前・工業的な哲学は、瓶詰めにまで及んでいるのである。瓶詰めという、我々のワイン造りにおける最終段階は決定的に重要で、あらゆる細部に入念な注意が払われていれる。品質と長寿を保証するため、最大限の手間がかけられているのである。

ワイナリーでの樽熟成が終わると、ワインは隣にある瓶詰め棟へとポンプで運ばれる。到着ののち、パッド・フィルターに通して、樽熟成中に沈殿しなかった澱(浮遊した状態で残るタンパク質/リグニン)をすべて取り除く。パッド・フィルターによる優しい濾過により、こうした物質が取り除かれ、輝きのある澄んだ状態が得られるのである。濾過のプロセスはとても穏やかなものだから、ワインが傷を負うことはない。

次の段階は、濾過の済んだワインを貯蔵用タンクに移すことで、これが実際の瓶詰め直前になされる最終の移動となる。空気を遮断するタンクは瓶詰め室の真上に設置されていて、そこから瓶詰めラインへは重力だけでワインを供給する。これも、自然なプロセスによって、ワインに優しくありたいという姿勢の表れである。酸素にワインが触れないよう慎重な管理がなされており、というのも酸素にワインが触れると酸化によって熟成能力が損なわれるからだ。

貯蔵用タンクの下では、作業員たちが瓶詰め室における最後の準備に忙しく励んでいる。まず、空瓶が到着すると、欠陥がないか一本ずつ検品する。地元で生産されている瓶で、シリコン・ヴァレーから東にわずか90分車で走ったところに工場はある。検品を通過したボトルは、瓶詰めとコルク打ちのプロセスへと進む。充填機と打栓機がひとつになったものは、一体型充填機と呼ばれている。型名はシンクロフィルというもので、瓶詰め設備で世界的に有名なイタリアの家族企業、ベルタロッツィ社が製造したものだ。

この段階までくると、貯蔵用タンクの真下にいることになり、ここでは重力だけが働いている。それぞれの瓶にワインが詰められ、すぐさまコルクが打たれる。樽熟成中は、効果を発揮する必要最小限の亜硫酸しか添加していないのだが、瓶詰め前やそのさなかに亜硫酸が追加されることはない。多くのワイナリーでは、酸化を防ぐために瓶詰め時に亜硫酸の量を増やしているが、リッジではそうしていない。重い不活性ガスである窒素を使うことで、ワインが酸素に触れるのを防げるので、酸化のリスクは最小限となる。

ここから数秒のうちに、それぞれのボトルには、昔から変わらず使い続けている銀色のキャップシールが施され、リッジのワインだとわかるようになる。

工程が終盤にさしかかると、それぞれのボトルにはラベルが貼られ、リッジ・モンテベロの2014ヴィンテージの一部となる。最後のステップは、一本一本にレーザーの刻印を加えることである。必要に応じて、追跡調査ができるようになるのだ。

さて、2014年ヴィンテージの出来映えはどうなのだろうか。モンテベロ・ワイナリーの醸造責任者で、COO(最高執行責任者)でもあるエリック・ボーハーの言葉を引いておこう。

「53年のリッジの歴史の中で、これほど収穫期間が短かった年はない。モンテベロの畑全体が、ジンファンデルの収穫と時を同じくして、9月の1ヶ月間で熟したことはかつてなかった。あらゆる品種を同時に発酵させねばならず、ワイナリーのタンクは瞬く間に一杯になったから、ノン・ストップで働き続けることになった。幸い、施設の容量には余裕があり、それぞれのロットを必要なだけ発酵させることはできている。おかげで、すべてのロットでしっかりとした抽出が可能になった。例年と同じく、アルコール発酵もマロラクティック発酵も、天然の微生物を利用したものだ。ともに通常よりゆっくり進んだのだが、1月下旬のブレンド用試飲までには完了してくれた。完成したブレンドは、37%を格下げしたもので、真に古典的なモンテベロとなっている。エレガントなワインで、タンニンをしっかり包んでいるのは、山の果実の豊潤な果実味だ。ブドウ由来の豊かな酸は、フレッシュ感をもたらすとともに、25〜30年の熟成能力を与えてくれている。素晴らしく魅力的な果実風味があり、全体のバランスに秀でているため、若くして飲んでも楽しめるが、熟成による風味が加わって複雑味が増すには、さらに十年寝かせやる必要がある」

マイケル・デショット
小売り・接客主任
リッジ・ヴィンヤーズ/モンテベロ

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