連載コラム Vol.316

2017ハーヴェストレポート その4

2017年11月2日号

Written by 黒川 信治

酷暑、大規模な山火事と、波乱に満ちた展開となった2017年のハーヴェストも、10月末で幕を閉じた。現地にいる大塚食品の醸造家 黒川信治からのレポート、今年の完結編をお届けする。

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8月24日に始まったハーヴェストは、丁度二ヶ月目の10月23日に最後のブドウを収穫し、10月30日に最後のタンクのプレスで幕を閉じた。色々な事があり、非常に長く感じられた2017年の収穫期は、冬の雨から始まった。

冬の雨は、恵みの雨と喜んでばかりいられない事態を招いた。ヒルツバーグ(ソノマ)ではスーパーの駐車場でボートが漕げる程の水が溜まり、モンテベロでは、土砂崩れを引き起こし、ハーヴェスト時に道路が使えなくなるなど、数年ぶりのまとまった雨であった。

また、高温と低温のアップダウンの激しい年でもあり、リットン・スプリングスでは、102F(39℃)を超えた日は平年の3倍を超え、14日もあった(2011〜2016の平均4日、最大9日/2015年)。暑かったが、寒くもあったという感想が良く聞かれた。

そして、収穫は8月後半に始まり、直後の8月末から9月初旬に訪れた、今年を象徴するような酷暑の影響でジンファンデルとシャルドネの収穫が加速したことで、収穫のタイミングが一斉に訪れ、どの畑から収穫していくかを判断するのが難しい年となった。

熱波の影響でジンファンデルとシャルドネの収穫は9月初めにほとんど終わり、カベルネの収穫まで、しばらく小休止があり、9月中旬よりゆっくり再開した。今年はメルロが豊作であったこともあり、カベルネの方が先に収穫される傾向がみられた。畑によるばらつきは見られるが、カベルネのタンニンが良く抽出され力強い味わいになっている。

ボルドー品種の成熟が、ゆっくりと進む中、10月8日にナパ・ソノマ地区の歴史的な大火災が発生した。100km以上離れたモンテベロまで煙の臭いが来たこともあり、やむなく二度目の小休止。ノースベイ・エリアにあるリッジの畑で唯一残っていたパガニ・ランチは、火災の前日の10月7日に収穫を終えている。

モンテベロでは、煙臭のないことを確認して収穫を10月17日に再開。そこから立て続けに収穫を続け、10月24日(火)にペローネ・ヴィンヤーズのカベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、カベルネ・フランで終了した。

各地に飛び火したこの火災も10月19日の雨により、急速に沈静化に向い、本日10月31日に全ての地区でcontainedが100%となった。これらの火災とは別に10月16日の夜にモンテベロの南12キロ付近で発生したBear Fireも10月27日に100%となっている。乾燥した気候のカリフォルニアでは毎年、どこかで火災が起きているが、今年は特別であった。

品質に関しては、今年の特徴の一つである太陽の恵みをしっかり受けた2017年のワインは、熟した果実の風味を伴い、力強く複雑な味わいのワインとなっている。モンテベロのワインメーカーであるエリック曰く「ジンファンデルも、カベルネも2001年と似ている」。2001年のモンテベロは、RIDGEの中では、一番アルコールが高かったが、熟成してよくなってきているヴィンテージである為、楽しみである。

カリフォルニアでは、西側の太平洋を流れる寒流のお陰で、海からの涼しい空気が冷涼な夜を招き、内陸からの乾いた暖かい空気と日中の恵まれた日照により、果実を生育するのに素晴らしい環境を醸しだす。良い果実からこそ、良いワインが出来ると言うことを実証している素晴らしい場所である。カリフォルニアがいかにワイン造りに適したエリアであるかをもう一度、見直していただき、カリフォルニアワインを積極的に飲む事で、復興支援の微々たる一役を担えればと思う次第である。

そして、最後にもう一度、被災された方々へ心よりお見舞いを申し上げると共に、一日も早い復興をお祈りさせて、最後のレポートとする。

2017年10月31日
黒川信治

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