連載コラム Vol.314

2017ハーヴェストレポート その2

2017年10月4日号

Written by 黒川 信治

2017年のハーヴェストも佳境に入っている。現地でワイン造りに加わっている、大塚食品の醸造家 黒川信治によるレポート第二弾である。

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今年の天気はめまぐるしく変わる。

9月初めにSFで40℃を越えた記録的な熱波の影響で、8月末から続いていたジンファンデルの収穫は9月8日まで休むことなく続いた。この時点でジンファンデル、シャルドネ共に90%を超える収穫は終わっていた。

そんな記録的な高温が続いた後に寒さが訪れた。そして、僅かであったが、雨も降り、低温はしばらく続いた。日本では、珍しくもない夕立のような雨で大きな問題にはならなかったが、収穫は、しばらく中断された。その間に2回テスト的にカベルネを収穫してみたが、サンプリングと実物の結果に差が見られたことで、慎重を期す為に、しばらく待ち状態とした。

9月18日に本格的に再開してからは、その週末の土日を除き、毎日収穫が行われおり、今も続いている。

高温による糖度の上昇には、フレーバーやフェノール化合物の生成が追いつかないことがある。今年は、その糖度上昇を見ながら、フレーバーが追いついてくるところを待ち、ピンポイントで収穫を決めなければならず、たくさんの畑のブロック全て意識下において、ワインメーカー自らが頻繁にサンプリングに出かけ、畑の気配とブドウの機嫌を伺ってくることが、いつもに増して重要なヴィンテージとなっている。

他の特徴は、ジンファンデルは発酵が早かったが、カベルは発酵がゆっくり進む傾向が見られる事。カベルネは酸味もしっかりしていているように感じられる。

発酵が遅い一つのパターンとして、ラクトバチルスの発生が過去に見られたようで、DNAキットで確認したところ、ラクトバチルス陰性であり、別の要因で遅いようである。気持ち窒素化合物の数値が低いような気もするが、これが原因かどうかは定かではない。

発酵がスローで醸し時間が長くなる事で、タンニンの抽出が進みすぎるのを避ける為、果帽に果汁を掛けるポンプオーバーをやめて、果帽の下へ果汁を戻すサーキュレーションと呼ぶ循環だけするパターンを多用するタンクが多くなっている。

裏を返せば、ポリフェノール化合分(アントシアニン、カテキン等)はしっかりブドウが持っているという事でもあり、ブドウの熟成は良好ともいえる。

他に変わったことと言えば、カベルネが始まっているのにメルロの収穫がゼロであること。通常は、メルロが先に収穫されて、途中からカベルネが始まるパターンである。

開花時期の天候や6〜7月の温かい気候に後押しされた影響もあってか、メルロは豊作ゆえに成熟に時間がかかり、カベルネより収穫が遅れていた。そのメルロも、次々に成熟し始め、明日、2017年初めてのメルロを収穫する予定である。

気温のアップダウンによる影響が大きく収穫のタイミングを見極めることが難しい年になっている2017年ヴィンテージであるが、今のところ収穫を終えたジンファンデル、シャルドネは、良いワインに仕上がりそうである。

このまま、注意深く畑の観察を続けて、残りのモンテベロの畑の収穫を続けていくことになるが、現状では、全てのブドウが後一歩と言うところに来ているので、この先2〜3週間、最後のブドウを摘み終えるまで、休み無く収穫が続きそうな気配である。
2017年10月3日
黒川信治

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