連載コラム Vol.313

2017ハーヴェストレポート その1

2017年9月19日号

Written by 黒川 信治

2017年のハーヴェストが、8月末から始まった。現地でワイン造りに加わっている大塚食品の醸造家 黒川信治によるレポート第一弾をご覧いただきたい。

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2017年の収穫は、8月25日に今年もパソロブレスから始まった。

5月に確認した際の収穫予想では、レイバー・デー(勤労感謝の日/9月第一月曜日)以降のスタートとされていたが、予想より10日ほど早いスタートとなった。これは、6月、7月、8月、それぞれに訪れた40℃を超える暑い日の影響で、生育が早まったと考えられる。

その一方で、6月には20℃を下回る寒い日もあり、暑いだけではなく気温の上下変動を繰り返したことも今年の特徴のひとつである。2016年も上下変動を頻繁に繰り返したが、今年のように40℃を越える日が数日継続することは無かった。

そのような気温の変動を受けた結果、レイバー・デーである9月4日には今年の予想収穫高の4割程度が既に処理され、9月10日の時点では、ジンファンデルとシャルドネは、8割以上終わっており、20日頃には、ボルドー品種を残すだけとなりそうな状況である。

もう一つの特徴は、2012年から3年続いた記録的な干ばつの後、5年ぶりに冬場の降水量が潤沢となった事で、十分な水分を地中に蓄えることが出来たヴィンテージとなった事も忘れてはならない。これが、ブドウの葉をしっかり茂らせる事で、40度を超える暑い日差しからブドウの実を護ってくれているようにも感じられる。他には、開花期の天候不順による結実のばらつきが見られる。そこへ来て、この安定しない天候ゆえにブドウの成熟度にばらつきが多く、収穫のタイミングを見極める事が非常に難しくなっている。

この冬の大雨の弊害は思わぬところにも出ている。雨の少ないカリフォルニアは排水のインフラが大雨に適合していない為、日本ではたいしたこと無い雨量であっても洪水になったり、小さな土砂崩れを起こしたりすることが多い。今年の雨は、狭い山道であり唯一のアクセスする手段であるモンテベロ・ロードの一角に、軽い土砂崩れを発生させた。8月いっぱいで終わるはずの、その工事が長引き、9月7日まで継続した関係で、小型トラックへ積み替えてワイナリーへ運ぶというイレギュラーな事態の中で2017年ハーヴェストは始まり、9月1日には、あのマーク・トウェインの「一番寒い冬を過ごしたのは、サンフランシスコの夏だった」という言葉で代表される夏涼しい事で有名なサンフランシスコにおいて観測至上最高の41℃を記録するという、こちらも前代未聞の事態が発生している。このときは、ベイエリアいったいが熱波で覆われた感じで、ワイナリーのある山の上でも42℃であった。

そんな波乱の幕開けの2017年ヴィンテージであるが、ワインの品質には問題なさそうである。品質を含む諸々の続きは次回のレポートで報告することにさせていただく。

明日、遅れていたプティ・シラーと遅摘みのジンファンデルの収穫をもって、ソノマ地区が終了し、ボルドー品種のみとなる。

2017年9月15日
黒川信治

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