連載コラム Vol.311

ベニート・ドゥージーとその畑について

2017年8月15日号

Written by 立花 峰夫

リッジの「ジンファンデル・パソ・ロブレス」は、AVAパソ・ロブレスにある単一畑、ドゥージー・ランチのブドウのみを用いて造られている。以下は、リッジの公式ブログに発表された、所有者ベニート・ドゥージーとそのブドウ畑の物語である。

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この物語は1967年、リッジの創設者のひとりであるデイヴ・ベニオンが、ドゥージー家の玄関をノックしたときに始まる。1923年に植えられた畑から、5トンのブドウを買いたいと申し出たのだ。ベニートの両親であるシルヴェスターとカテリーナは、イタリアからアメリカへとやってきた移民で、1920年代にパソ・ロブレス地区に落ち着いていた。1924年にブドウ畑を購入し、そこで3人の息子――グイド、ダンテ、ベニートを育てた。グイドとダンテが1944年に出征すると、畑の耕作は、父と当時まだ11歳だった若きベニートに委ねられる。ベニートはそれ以来、今日に至るまで樹の世話を続けてきた。

この畑は実に際立った特徴を備えている。土壌は、周囲にある石灰岩の丘から洗い流されてきた沖積層である。今では、現代的な小規模ショッピング・センターとセメント工場に取り囲まれ、国道101号線に隣接している。農場の母屋と離れの外観は、1950年代の写真とまったく変わっておらず、木々だけが高くなった。ベニートは、ブドウの世話を実に丁寧に行う。収穫の開始が、リットン・スプリングスやガイザーヴィルよりわずかに早いため、仕込みの作業の山をならすことができている。結実不良や収穫時の悪天候のリスクを分散させるため、2、3の異なる場所から高品質のブドウを得ておくのは良策なのだ。ベニートのブドウ畑から生まれるワインは、パソ・ロブレス産ジンファンデルのまさに典型である。口をいっぱいに満たす美しい果実味(チェリー、ベリー、スパイス)があり、タンニンは柔らかくまろやか。実に瑞々しく、口あたりがよい。

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