連載コラム Vol.310
モンテベロにクロアチアのジンファンデル その2
2017年8月1日号
Written by 立花 峰夫
前回に続き、クロアチアから来たジンファンデルの穂木を、モンテベロの畑で育てるプロジェクトについてのレポートを翻訳掲載する(全2回中の第2回)。
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なぜモンテベロにジンファンデルを植えるのか
この理由から、リットン・スプリングスの畑に将来植えるための、「クリーン」な苗木を育てる「母区画」が必要だったのだ。そこで選んだのがルーステン農園内の一区画である。この農園は、モンテベロの畑で唯一、ボルドー品種と少量のシャルドネについて、「クリーン」なクローンのみが植えられているのだ。
我々の畑では、ジンファンデルはすべて株仕立てにするのが伝統なのだが、この「母区画」ではコルドンの仕立てを採用している。畝間と樹間を狭くして、将来のためにできるだけ多くの枝を手にするためだ。コルドン仕立てのほうは、結果母枝の数がはるかに多い。この植樹間隔は、ルーステン農園に植わる長梢剪定のカベルネの畝と揃えられていて、トラクターが通りやすいのである。
どのようになされているか
デイヴィッド・ゲイツ(栽培担当副社長)と栽培担当者のカイル・テリオが、モンテベロにおけるこのプロジェクトを指揮しており、リッジがジンファンデルのクロアチアにおける兄弟を商業栽培する2例目になっている。プリビドラグのクローンがふたつと、ツールイェナック・カシュテランスキーがひとつである。
ルーステン農園の斜面の奥まった場所にある、この「母区画」は、標高670メートルの高さである。昔からある自社畑とは離れた場所にあって、リーフ・ロールやレッド・ブロッチといったウィルス病にかかるリスクを最小にすることができる。
母区画として、当初はリットン・スプリングスの畑に将来植えるための枝を採取するのが目的であり、果実を得るのが目的ではない。だが、母区画の樹が完全な成木になったあとは、数樽のワインを生産する計画である。
苗木がルーステン農園にもたらされた際、植え付け前に根の一部を切りそろえた。瘤があったり、糸のように細かったりする根を取り除き、旺盛に土の中に伸びる新しい根が生えてくるようにしたのだ。苗木は、いままで何も栽培されていなかった土に植えられ、有機肥料を加えてさらに樹が成長するようにした。
樹が育ってくれば、近くに暮らす栽培家のカイル・テリオ率いるチームが一本一本剪定をして2芽を残し、その芽が新梢となり、やがてしっかりした幹になるのである。
これから数年にわたり、この新しく素晴らしい樹々の世話をして育てていくことになる。将来、この区画の樹から生まれるワインを分かち合うのが楽しみでならない。