連載コラム Vol.307

エリック・ボーハーとの会話 その2

2017年6月15日号

Written by 立花 峰夫

以下は、リッジの地方販売部長であるダン・バックラーが行った、モンテベロ・ワイナリーの醸造責任者エリック・ボーハーへのイン

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人に求める一番大事なことは、正直さと友情だね。

子供の親になることで面白いのは、いかにDNAが強力なのかがわかることさ。子供は育つと親に似てくるんだけれど、それがどこから来ているかなんだよ。天性のものなのか、環境によるものなのか。息子と娘の性格を見るのは、なんとも興味深いね。子供のどちらかが怒って噛みついてくると、「コイツは自分の小型なのか?」って思うのさ。

ハワイのビーチにいて、砂浜を走り、美しい景色と新鮮な空気に囲まれているときが、一番リラックスできるね。収穫時期にはどんなに忙しくても、時間をつくって頭をクリアにするようにしている。離れた場所にある畑、たとえばジムソメアの裏手なんかに足を運んで、畝を眺めながら果実をサンプリングするんだ。

フィットネスと栄養補給が、自由になる時間にハマっていることだね。最新の栄養補助食品やサプリメントを研究して、その生化学の全貌を理解しようとしている。自分にとって、身体のケアをすることは、ワイン造りのように激しく厳しい職業をこなしていく上で、重要なことなんだ。

独学で身につけたのは、35ミリのカメラをどうやって使うかでね。学校の暗室で現像もしたよ。いろんな薬品を使って、画像を印画紙に焼き付けていくのにはそそられたさ。

ワイン造りがもしなかったら、アタマがおかしくなるんじゃないかな(笑)。何をしていいかわからないだろうからね。全人生が、収穫から瓶詰まで、季節とともに回っているんだ。ただ、ワイン造りをしていなくても、ワイン業界にはいて、マスター・オブ・ワインを目指し、ワイン教育者になっていたんじゃないかとも思う。ワインにまつわるあらゆることが好きだし、世界中を旅してワイン産地を回っているかな。

最後の晩餐を選べるんなら、自宅で家族とともにいて、ブドウの枝の薪でグリルした、フィレ・ミニョンを食べたいな。ベーコンと一緒にローストした芽キャベツと、トリュフ・オイルで蒸し煮にしたマッシュポテトを付け合わせにしたい。モンテベロの1974年を合わせるのが最高だろう。

家族をもったことで、忍耐を覚えたよ。「流れに身をゆだねる」生き方をするようになったというかね。家族がいるから、一生懸命働いて成功しようと思う。いい暮らしをさせてやりたいし、夢を叶える手伝いをしてやりたいからね。

もし生まれ変われるんなら、ポール・ドレーパーの飼い犬の一匹になりたい(笑)。いい生涯だろうと思うよ。いつもご主人様に連れ添って、公園に行き、たくさん食べて、モンテベロの山にいるコヨーテを追いかけるんだ。

テロワールはとても複雑な概念だけれど、地質、土壌の鉱物組成が、自分の造るワインには最も強く影響しているように思う。

卒業して社会人になることが、自分にとって最も恐ろしいことだった。大学を出て一人暮らしを始め、結婚して、仕事を始め、子供が生まれて……この全部が立て続けに起きたんだ。何もかも早くやってきた。あれから長い年月が経ったけれど、まだ楽しんでいるよ。

18歳の頃の自分は、これから言うアドバイスにはきっと耳を傾けなかっただろう。でも、あの時の自分には、当時苦痛だった勉強をもっとしっかりやっておくように言いたいよ。文学や国語だね。何かを書くことや、人にうまくモノを伝えることは、キャリアを築き、博識な人間になるためにとても重要だからね。自分の父親は芸術家なんだ。だから、もっと芸術を勉強して、真剣に取り組めたらいいなと思う。

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