連載コラム Vol.293
オバマ大統領 最後の公式晩餐会でイースト・ベンチがふるまわれる
2016年11月15日号
Written by 立花 峰夫
米国のバラク・オバマ大統領は10月18日、イタリアのマッテオ・レンティ首相をホワイトハウスに迎え、任期中最後の公式晩餐会を催した。その席で、メインの肉料理と共にサービスされた主役の赤ワインが、リッジのジンファンデル・イースト・ベンチ2014。オバマ大統領が、中国の習近平国家主席をカリフォルニアに迎えての公式晩餐会で、ガイザーヴィル2008を供してから3年余り。またもやリッジのジンファンデルが選ばれたことになる。
この日の料理は、「アイアン・シェフ」(アメリカ版テレビ番組『料理の鉄人』のレギュラー出演者)としても知られるイタリアンの料理人、マリオ・バターリが担当した。バターリは、ニューヨークの「バッボ」ほか多数のレストランのオーナー・シェフで、ミシェル・オバマ夫人との縁から今回声がかかった。
ワインを選んだのはバターリで、ディナーが屋外で催されるため、ワインの香りが飛散しがちな環境にも負けない力強い赤ワインにしたとコメントしている。バターリは、自身のレストランでリッジを取り扱っており、その味わいをよく知っていた。
リッジとイタリアとの間に、直接的な関係はない。この日、リッジ以外に出された2種のアメリカワインは、イタリア品種を使ったものである。イースト・ベンチのブドウ品種ジンファンデルは、イタリア南部プーリア州で栽培されるプリミティーヴォと同一種だが、もともとのルーツはクロアチアのトリビドラグ(ツールイェナック・カシュテランスキー)というブドウだ。リッジのCEOであるマーク・ヴァーノンは、「アメリカに移民してきたイタリア人たちの長い歴史、特にジンファンデルを用いてのワイン生産・消費の伝統が、背景にあるのではないか」と推測している。リッジは、ディナー前日にメニューが公開されるまで、イースト・ベンチが選ばれたことを知らなかった。
イースト・ベンチは、ソノマ郡ドライ・クリーク・ヴァレーの自社畑から生まれる赤ワインで、ジンファンデル100%で仕込まれる。畑は、フラッグシップの自社畑であるリットン・スプリングスに隣接し、植樹は2000年と比較的樹が若い。リットンと共通する力強さを示しつつも、この品種らしいジューシーな果実味を堪能できる銘柄である。
当日の料理とワインは以下の通り。バターリと、ホワイトハウスお抱えシェフのコラボレーションである。
●パスタ
サツマイモのアニョロッティ バターとセージ添え
ワイン: パルミナ ヴェルメンティーノ・サンタ・イネズ2015
●サラダ
ニホンカボチャの温かいサラダ エンダイブとニューヨーク産ペコリーノ添え
ワイン: ヴィラ・ラガッツィ サンジョヴェーゼ・ナパ2012
●メインディッシュ
牛肉のグルグル巻きブラチョーラ ホースラディッシュのグレモラータとブロッコリ・レイブ添え
ワイン: リッジ ジンファンデル・イースト・ベンチ2014
●デザート
青リンゴのクロスタータ タイムのカラメルとバターミルクのジェラート