連載コラム Vol.289

国際化の視点

2016年9月15日号

Written by ハイジ・ナイジェン

リッジ・ヴィンヤーズのワインは、世界50カ国以上で販売されている。これは、ちょっとした数字ではない。相当な苦労を数十年にわたって続けた結果、世界中にかくも広い流通網を持てているのだ。数十年の付き合いになる素晴らしい輸入業者もいて、すなわちイギリスのフィールズ社やモリス&ヴァーディン社、スイスのマーテル社、ドイツのアルピーナ社などだ。

ワイン業界において(どの業界でもそうだろうが)、最も重要な要素のひとつなのが「人」であり、その人々との関係性である。上述の国際的な関係はいかにして築かれ、維持されているのか。やりとりは、かつての時代、手紙や電話だった。今日では電子メール、ソーシャルメディアなどに移り変わりつつあるが、ひとつだけ変わらないものがあり・・・・・・それは実際に会うことである。

(新着ヴィンテージを注ぎながら)流通業者の多くと顔を合わせることができる、業界関係者限定の展示会の中でおそらく最良なのが、プロ・ヴァインである。2年に一度、3月にドイツのデュッセルドルフで開かれる。プロ・ヴァインに参加する業界人の数は、5.5万人以上。展示ブースを出すのは、57カ国から6,000生産者。とんでもない数である! 9つの展示会場で開かれるプロ・ヴァインは、ちょっとした町さながらなのだ。

この春のプロ・ヴァインでは、ヨーロッパ、アジア、アメリカ大陸から20を超える輸入業者と顔を合わせることができた。新たにリッジを輸入したいと考える国からの問合せも半ダース近くあって、カザフスタン、ポルトガル、イタリア、ペルーなどだ。リッジの大ファンという人々にも、会うことができている。中には、数十年にわたってワインを買い続けてくれている方もいるのだ。リッジのワインや従業員にまつわる思い出や、ワイナリーを訪問したときのことを話してくれたり、写真を見せてくれたりする。いつも、驚かされたり、慎ましい気持ちで勉強になったりするものだ。

過去3年、プロ・ヴァインに(仕事として?)参加できるのは、実に有り難いことだ。断言するが、並大抵のイベントではない。一日6時間ぶっ通しでワインを注ぎ続けるのが3日連続するのだが、ウキウキしていられるのは最初の1時間だけだ。リッジのブースには常に人だかりができ、ワインを注ぐのが追いつかないときもある。皆さん、申し訳ない!

だが、そうだとしても、年中やりとりをしている世界中の取引相手と顔を合わせたり、リッジの熱心なファンと会ったりするのは大好きだ。誰もかれも、愉快で気前がいい人ばかり。こんなに立派なワイナリーで働けるなんて幸せである・・・・・・偉大なワインを造ることで我々は、素晴らしい友人たちをも得ているのだ。

ハイジ・ナイジェン(マーケティング・マネージャー)
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