連載コラム Vol.282

ガイザーヴィル50周年

2016年5月31日号

Written by ポール・ドレーパー

リッジが最初期に着手した2つのジンファンデルのうち、1966年以来毎年生産しているのはガイザーヴィルのみである。今年、すなわち2016年にガイザーヴィルのブドウを摘み取ったならば、この類い希な場所からの50周年を祝う収穫物となる。最も古い区画は、19世紀に植えられた混植のものであり、ジンファンデルとカリニャンが大半を占めている。リッジのガイザーヴィルは、1930年代後半以降で初めて、「高級ワイン」として造られたカリフォルニア産ジンファンデルだった。リッジは1962年、カベルネの造り手としてその歴史をスタートさせたが、モンテベロの果実と同じ伝統的かつ前・工業的な技術を、ガイザーヴィルのブドウにも使ったのだ。いずれのブドウも、ごくわずかな期間にしか得られない理想的な熟度で収穫され、天然酵母で発酵、樽で熟成させられた。カベルネと同じように仕込まれた70年代前半のガイザーヴィルは、カリフォルニア、あるいは世界で最もジンファンデルに適した場所のひとつを、我々が見つけたことを証明してくれている。

ジャンシス・ロビンソンは、著書『ヴィンテージ・タイムチャート』において、70箇所のブドウ畑を偉大なものとして紹介した。彼女は、モンテベロとガイザーヴィルの両方をこの本に選んでいる。ジンファンデルの畑が、ボルドーのトップ・シャトー、ブルゴーニュで最良のドメーヌと肩を並べたのは、これが初めてのことだった。

ガイザーヴィルにおいては、「オールド・パッチ」の区画がワインに背骨を与えてくれている。この4.5エーカーの区画は、大いなる深みと異国風の果実風味をワインにもたらしてくれるのだ。ガイザーヴィルで最も古いここのブドウ樹は、1891年に植えられている。混植の区画であり、35%がカリニャン、26%がジンファンデル、19%がアリカンテ・ブーシェ、9%がマタロ、7%がペティト・シラー、4%がその他の品種である。「その他の品種」は、この畑の場合には多数のブドウを意味しており、サンソー、グラン・ノワール、グルナッシュ・ノワール、ブラック・ミュスカ、プルールサン、ビュルジェ、プティ・ブーシェ、オーバン、シラー、バスタルド、ヴァルディギエ、モルタウ、クリオージャ・メディアーナ#2に加え、5、6種の生食用ブドウが含まれている。ガイザーヴィルに特有の個性は、古木のカリニャンの含有比率が比較的高いことに帰せられることが多い。しかしながら、その土地そのもののほうが、ワインを形作るうえではさらに重要なのだ。

ブドウ畑は、ロシア川の古い川床の西端にある丘に沿って広がっている。川そのものは今日では2キロほど東を流れているが、数千年前には他に類を見ない石混じりの粘土土壌を、幅400メートル、約5キロの長さでもたらしてくれた。この土は、美しい輪郭をもつ果実味に加え、際立ったミネラル風味をワインに与えてくれる。夜温が低いおかげで、どの品種にもしっかりした酸味があり、品種特性として酸味が控えめなペティト・シラーですらその例外ではない。長いブドウ生育期間のおかげで、穏当な糖度で十分な風味が得られ、バランスとエレガンスに秀でたワインとなる。ガイザーヴィルにはあらゆる高級ワインに共通する条件が備わっているのだ。すなわち、安定した高品質と、ブドウが育つ地面に由来する特有の個性である。

ポール・ドレーパー(最高醸造責任者兼CEO)
2016年1月
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