連載コラム Vol.278

ポール・ドレーパーの人生を変えたワインなど

2016年3月31日号

このたび、リッジ・ヴィンヤーズの公式ブログ(英語版)に、ポール・ドレーパーのミニ・インタヴュー(下記)が掲載された。英国の新進ワイン雑誌『Noble Rot』の取材の一部として行われたものである。

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●あなたの人生を変えたワインといえば?

1864年のラフィットです。1970年代前半にクリスティーズから買ったもので、イギリスの皇太后がグラームス城に集めていたワインのうちの一本。完璧な状態でした。とても女性的ですが、信じられないほど複雑な味わいのワインで、1975年に友人たちと開けました。その時点で100年以上経っていたわけですね。


●今まで仕込んだワインの中で、一番の自信作は何ですか? その理由も教えてください。

偉大大なヴィンテージの1970のほうが、品質・寿命の両面で勝るのかもしれませんが、やはり1971年のモンテベロでしょう。このワインは、パリ・テイスティングから30年目の再試飲において、ロンドン・カリフォルニアの合計で一位に輝きましたから。二位との差は18点もありました。他のカリフォルニアワインに勝り、1970年のオー・ブリオン、ムートン、モンローズにも勝利しました。71年は冷涼なヴィンテージで、12.2%のアルコールでブドウが完熟しました。ワインは若い時分から完璧なバランスだったのです。このワインを選ぶのは、12.2%という低いアルコールで得られたバランスのおかげで、風味が25年以上にわたって発展し続けたからです。2006年の再試飲の時点では、すでに35年が経過していたにもかかわらず、まだその味わいがピークにありました。昨年、44年が過ぎた段階で飲んでみましたが、まだ美しいままでした。


●あなたがワイン造りを始めてから、カリフォルニアワインはどう変ってきましたか?

もちろん、一部は大きく変りましたね。ただ単に良いワインを造ろうというのではなく、「贅沢ワイン」を造ろうという人たちなんかは。大げさな宣伝と、馬鹿高い価格がおなじみです。46年前、私がリッジで醸造を引き継いだとき、優れたワインを本気で造ろうとしていたワイナリーなど、カリフォルニアにせいぜい5つぐらいしかありませんでした。ところが、今では数百軒という数です。かつて、ほどよい熟度、適熟の状態でブドウが摘まれていたカベルネ主体のワインは、今やそのほとんどが過熟の状態でブドウが摘まれています。アルコール度数も、12.5〜13.5%程度だったのが、今では(低減処理前の度数が)14.9〜15.9%か、それ以上にもなっているのです。


●他の造り手で、同じカリフォルニアの同胞であることが誇らしく思われる人はいますか?

キリがないほどいますが、そのワインや醸造技術、ブドウ畑に最も親しみを覚えている人を挙げるならば、キャシー・コリソンとファイラのエーレン・ジョーダンについては技術とスタイルが、エリアス・フェルナンデスについては世話をしているブドウ畑が、それぞれ素晴らしいと思います。


●カリフォルニアで、あるいはカリフォルニアについて書かれた歌の中で、一番は何でしょう?

1960年代に何年か、ニューヨークのアッパー・イースト・サイドに住んでいたのですが、その時の経験から、ピーター・ポール・アンド・マリーの『カリフォルニア・ドリーミング』を選びましょう。歌詞を見れば、何故この歌かがわかるはずです。


●次のカリフォルニア州知事を、ハリウッド俳優から選ばないといけなければ誰にしますか?

これまでに州知事だった二人の俳優からすると、俳優は最良の選択とは言えないでしょう。ただ、どうしてもというならば、リチャート・ギアかトム・ハンクスを選びます。

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