連載コラム Vol.272

モンテベロ50周年とこれからの50年

2015年12月25日号

Written by ポール・ドレーパー

2012年ヴィンテージのモンテベロで、リッジが最高のワイン造りに取り組み始めて50年になる。

***

1969年、私がリッジの醸造責任者になるようオファーを受けたとき、共同経営者たちは62年と64年のモンテベロを振る舞ってくれた。うちの一人であるデイヴ・ベニオンが、1959年からモンテベロのブドウを使い、半樽のワインを製造していたのだ。それまでに、ワインを仕込んだことのある者は誰もいなかった。天然酵母でブドウを発酵させ、清澄も濾過もせず、最小限の亜硫酸だけを添加していた。この時代は、どんなワインでも安価だった。だから私は、45年から49年にかけてのボルドーの偉大なヴィンテージや、イングルヌックやサンタ・クルーズ山脈のラ・クエスタによる、1930年代後半の卓越したカリフォルニア産カベルネを味わったことがあった。リッジの62年と64年は、偉大なボルドーに比肩しうるもので、1930年代のカベルネと同じぐらい複雑に思われた。私がそこで悟ったのは、リッジの創設者達は、大いなる幸運の導きで卓越した畑に行き当たったということだ。冷涼な気候と石灰質の土壌は、最低限の介入しかしないワイン造りによって光り輝くことが示されていた。リッジに加われば、素晴らしいワインを仕込む機会が得られるはずだと考えたのだが、私が正しかったことは、その後の歳月が証明してくれている。モンテベロは今日、カリフォルニアで最良にして最も寿命の長いワインのひとつである。

単一畑でのワイン造りと最低限の介入という哲学に沿って、チームを集め鍛え上げてきた。この先の50年では、さらに畑から学び、毎年より高い品質にむかって喜びとともに邁進していきたい。才能に満ち、長く勤め上げてきたチームのメンバーを紹介すると、まずデイヴィッド・ゲイツ。栽培担当副社長で、1989年から畑の管理をしている。モンテベロ・ワイナリーの醸造担当副社長であるエリック・ボーハーは、1994年にリッジに加わった。リットン・スプリングス・ワイナリーの醸造担当副社長であるジョン・オルニーは、1996年にリッジにやってきている。私は長年にわたり、形にとらわれずにスタッフたちを導いてきたが、スタッフたちも己のアイデア、洞察、知性をリッジにもたらしてくれた。未来において、リッジとそれが生み出すすべてのものを、動かしていくのは彼らである。

ポール・ドレーパー

2013年6月以前のコラムはこちらから