連載コラム Vol.270

アントニオ・ガッローニがモンテベロを垂直試飲

2015年11月30日号

Written by 立花 峰夫

アメリカの有力ワイン評論家、アントニオ・ガッローニがモンテベロ・ワイナリーを訪れ、1960年代まで遡るモンテベロ赤を垂直試飲した。その結果が先日、ガッローニが主催するワイン評価媒体『ヴィノス』のウェブサイトにて、詳細なレポートとともに発表された。

記事およびテイスティング・コメントは、『ヴィノス』の有料会員のみ閲覧可能だが、点数についてはリッジのトレード向けサイトにも紹介されたので、下記に転載しておこう。

2014 Monte Bello: 94-97点(樽からのサンプル/2017年秋にアメリカで発売予定)
2013 Monte Bello: 96+点(2016年秋にアメリカで発売予定)
2012 Monte Bello: 98点
2011 Monte Bello: 94点
2010 Monte Bello: 97+点
2001 Monte Bello: 98点
1991 Monte Bello: 97点
1981 Monte Bello: 94点
1974 Monte Bello: 100点
1969 Monte Bello: 97点

ガッローニは、高得点を大盤振る舞いする評論家ではない。その彼が、これだけの高い評価を与えるのは珍しい。100点満点の1974年が目を引くが、他のヴィンテージの点数もおしなべて高い。冷涼な生育期間から、一般にはオフヴィンテージと言われる2010や2011についても素晴らしい評価となっている。ヨーロッパ的なエレガンスをもつワインを好むガッローニにとって、モンテベロは本当にお気に入りの銘柄のようだ。

ガッローニは、もともとイタリア・ピエモンテ州のワインを評価する媒体『ピエモント・レポート』を主宰していたのだが、ロバート・パーカーの目にとまり、2006年に彼のチームに加わった。以降、2013年まで『ワイン・アドヴォケイト』のレヴュワーとして、カリフォルニア、シャンパーニュ、ブルゴーニュを担当、濃い味を好むパーカーとは異なる視点からの批評を精力的に展開していた。その後、『ワイン・アドヴォケイト』が新体制となった2013年始めに独立、『ヴィノス』を立ち上げた。『ヴィノス』には、かつて『インターナショナル・ワイン・セラーズ』という媒体を主宰していたアメリカ人ワイン評論家スティーヴン・タンザーも加わり、『ワイン・アドヴォケイト』に対抗する新勢力となっている。

ガッローニの独立は、パーカーにとって業腹だったようで、訴訟騒ぎにまで発展した。ガッローニが去ったあと、カリフォルニアの評価については再びパーカーが担当するようになっている。ガッローニがかつて評価し高得点をつけたエレガント系ワインを、パーカーが再度試飲して低い点数に修正する事例が続出したため、「意趣返しだ」とも一時噂されていた。ただ、時代の好みは確実にエレガント系ワインのほうに振れているから、パーカーの仕返しも果たしてどれだけ功を奏しているか疑問である。

なお、ガッローニは今回のモンテベロ訪問に際して、モンテベロ赤以外の銘柄も試飲している。リッジのトレードサイトに紹介された評点は、下記の通りである。

2014 Geyserville: 91-94点(樽からのサンプル/2016年春にアメリカで発売予定)
2013 Chardonnay Estate: 92点
2013 East Bench Zinfandel: 91点
2013 Paso Robles Zinfandel: 90点
2013 Geyserville: 94点
2013 Lytton Springs: 95点
2012 Merlot Estate: 92点
2012 Cabernet Sauvignon Estate: 94点
2012 Monte Bello Chardonnay: 94点
2006 Chardonnay Monte Bello: 96点
1997 Chardonnay Santa Cruz Mountains: 94点
2013年6月以前のコラムはこちらから