連載コラム Vol.269

待った甲斐のある合意

2015年11月16日号

Written by デイヴィッド・アマディア

今年(2015年)の始めにリッジは、ミッド・ペニンシュラ・リージョナル・オープン・スペース・ディストリクト(注:サンフランシスコ湾岸の緑地帯を管理する団体/以下「ディストリクト」と表記)との土地交換を完了した。最初にディストリクトの提案を受けてから、約40年後の合意である。今回の合意は複雑なもので、禁酒法時代にうち棄てられたモンテベロの畑に属する42エーカーについて、リッジは永続的な耕作権を得ることができた。その土地は、19世紀に建てられた我々のワイナリーの南および東に広がっていて、標高2600メートル付近の畑に隣接している。モンテベロ・オープン・スペース自然保護地域のハイキングコースから見える場所に、リッジが保有する同面積の土地を決して開発しないこと――これが、合意にあたっての重要条件のひとつになっている。加えて、ディストリクト保有の土地に新しく拓く畑は、すべて有機栽培またはビオディナミで耕作されなければならない。

現在利用可能な32エーカーの土地に、葡萄を植える計画はすでに立てられている。もともとは、モンテベロ・ワイナリーの創始者オセア・ペローネが、1880年代に葡萄を植えた区画である。植樹は5段階で行う予定で、それぞれのフェーズの間には4年間の間隔が設けられている。フェーズ1用の8エーカーを整地するのが来年に始まり、植樹は2017年からだ。全段階を通じ、植えられるのはカベルネ・ソーヴィニョンが主だが、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、メルロもいくらか予定されている。果実の品質はとても高くなるだろう。樹が成木になれば、少なくとも半分はモンテベロに用いられるのではないか。カベルネのクローンについては、19世紀のサンタ・クルーズ山脈あるいはカリフォルニア州に起源をもつ我々のお気に入りが、4〜5種選ばれる。プティ・ヴェルドについても、10世紀のカリフォルニアで選抜されたものだ。古いクローンを使ったシャルドネの畑も、2、3エーカーほど植える予定になっている。リッジの畑では、根が土中に深く張って以降は灌漑を行っておらず、これはカリフォルニアでは珍しいことである。灌漑を行わないことと、段階的な植樹のおかげで、山の帯水層に悪影響が及ぶことはない。

近い未来について述べておくと、今からたった5年後には、フェーズ1で植えた畑から最大15トンのカベルネが得られる見込みだ。ワインにして1,000ケース相当で、樹が成木になるまではカベルネ・エステートになると思われる。32エーカーすべてに葡萄が植わると、新しい畑から最大で5,000ケースのワインが生まれ、カベルネ・エステートとモンテベロになるというのが長期的な予測だ。40年間見続けた夢が、ついに実現したわけだが、待った甲斐のある実りが得られそうである。

デイヴィッド・アマディア
(リッジ・ヴィンヤーズ 販売・マーケティング部門副社長)
新しく獲得した土地。
赤い線で囲まれた緑の部分が、新しく獲得した42エーカーの土地。最初の8エーカー(エリア2B)は2017年に植えられる。
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