連載コラム Vol.266

2015年ハーヴェストレポート その1

2015年9月15日号

Written by 黒川 信治

2015年のハーヴェストが順調に推移している。現地でワイン造りに加わっている、大塚食品の醸造家 黒川信治によるレポート第一弾をご覧いただきたい。

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1)いつになく早いスタート
リットン・スプリングス・ワイナリーでは8月12日にファンストン・ヴィンヤードから、モンテベロ・ワイナリーでは、8月15日にマゾーニ・ランチ(MZ)から、2015年ヴィンテージは始まった。これまでリッジの歴史上最も早い収穫のスタートだった2004年の8月17日より数日早いスタートとなった(このときもマゾーニMZから)。そして、8月末までの半月でモンテベロ170トンとリットン230トンを合わせ約400トンの収穫を終えている。

2)旱魃4年目
2012〜2014年までの3年間は、いずれも記録的な旱魃の年であった。そのあとに続く2015年は、期待にこたえ2014年12月にまとまった雨があり、3年続いた旱魃に一息ついたものの1月はほぼ雨が降らず、2月に多少の降雨を記録したが3月には再び少なくなった。

4月5月は、適当な降雨を記録。そして6月10日に数ミリの雨を記録した後は、再び乾燥が始まり、今日まで雨が降っていない。これまでに比べ多少雨が多いように思えるが、以前旱魃は続き4年目を迎えている。

雨が少なく冬にしては温かくなった晩冬の気候の影響か出芽が早く、開花期は冷涼で長く続いた。そしていつもより冷涼な5月。穏やかな夏は、ヒート・スパイクと言われる気温が跳ね上がる日も数えるほどしかなく、ナパではいつもより早い7月22日にスパークリング用のブドウから収穫が始まった。

8月の気温は25℃前後で推移し30℃を超える日は数日しかなかった。8月下旬から9月に入り気温が上昇。ちょうど、私がこちらに来た9月8日の週に最も暑くなり毎日30℃を超え、一番のピークとなった9月8日は各地で40℃前後を記録している。

その影響もあってか、私の到着を待ってくれたかのように最初のモンテベロの果実が、その翌日の9月9日に収穫され、メルロとカベルネが立て続けに成熟を迎えてきている。

3)教科書どおりに収穫されるブドウ
ここ数年、品種ごとの収穫のタイミングがごちゃごちゃであったが、今年は順序よくジンファンデルZN、シャルドネCH、カベルネCSと言った品種特性の順に理想的な収穫ができている。

おかげでタンクのやりくりが容易である。これを書いている9月14日現在、ほぼジンファンデルZNが終わろうとしている。いつもならこの時期は、発酵中のタンクの数が40前後であるが、今年はその半分以下である。いつもフル回転させている16基あるVタンクに手をつけずにここまできている、記憶に無い珍しいヴィンテージである。

4)高い品質と低い収穫量
今のところ、乾燥した年の特徴なのか、ほとんど病害の無いきれいな果実で、しっかりした味わい、品種特有の風味を伴った果実味を感じるワインができていて、今年もいいヴィンテージになりそうである。その半面、旱魃及び開花期が寒かったことも多少影響あるのか、収穫量がかなり少なくなりそうである。

2015年9月15日 黒川信治

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