連載コラム Vol.260

ジョン・ボネの記事

2015年6月15日号

Written by 立花 峰夫

サンフランシスコ・クロニクル紙のワイン担当編集者で、近年のIPOB(バランス重視型カリフォルニアワイン)ブームの仕掛け人でもあるジョン・ボネが、リッジについての長い記事を発表した。今年3月に開かれた、モンテベロ2014のプリムール試飲に参加してのもので、下記はその記事の抜粋である。

「『自分の持っている土地が、あるいはブドウを買っている畑が、人為的操作なしでもよいワインが生まれるところかどうかを確かめなければなりません』と、腰を下ろしたドレーパーは語る。『そうじゃないこともあります。その場合は、好きなように人為的操作をして、手に入ったブドウから望みうる最高のワインを作ればいいのです。ただし、一度はそのブドウにチャンスを与えてやるべきでしょう』
 モンテベロの達人の口から発される言葉にしては、やけにぶっちゃけた話に聞こえるが、実際それは事実なのだ。モンテベロや、ほかの歴史ある偉大な畑が、ドレーパーの指摘を裏打ちしている。そうした畑は今も巡礼の地になっているのだが、それは時の試練に耐えているだけでなく、農業の中にある文化的要素の指標にもなっているからである。1〜2時間をかけてかの地を訪れるのは、ワインの深い真実を理解するためなのだ。すなわち、偉大な土地の偉大さとは不朽のものであり、人間の手によるちょっとした虐待や、工業的生産が求める冷たい数値管理を超越しているのである。
 そうした畑にやってくると、(カリフォルニア州という)常に未来へと向かうアメリカの端に座っていても、この土地の過去がもつ活力と重要性を意識せざるをえない。ワインにおいてもほかの事柄と同様に、伝統こそがしかるべき進歩をもたらす原動力なのだ」
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