連載コラム Vol.258

イースト・ベンチの畑が有機栽培の認証を獲得

2015年5月15日号

Written by デイヴィッド・ゲイツ

2000年にリッジは、幸運にもリットン・スプリングスの自社畑の隣、斜面上方に位置する地所をリースすることができた。この台地の頂にある土地には、禁酒法以前にはブドウが植えられていたのだが、20世紀の残りの期間に再植がなされず、牧草地として利用されてきた。我々は、そこがどんな土壌かをよく知っていた(ちなみに言うと、サイツ・ロームというタイプの土壌である)。それから2年の間にその土地には、我々がお気に入りのジンファンデルの選抜クローンが4種植えられた。この素晴らしい土地からは、ドライ・クリーク・ヴァレー産ジンファンデルに特有の芳醇さを、見事に表す単一畑産ワインが生まれることが2006年までにわかる。そこでそのワインには、「イースト・ベンチ」という名が付けられた。

リッジは2008年までの数年間、有機農法によるブドウ栽培の実験を行ってきたのだが、その年から段階的に有機栽培認証を得ていこうと決めた。認証に先立って必要な移行期間は、アメリカでは3年間と定められている。当該の畑が有機農法で栽培されていなければならず、すなわち土壌改良剤、農薬、肥料はすべて有機農法で認められているものしか使えない。3年間の終了時点で、有機栽培認証機関の検査員が立ち入り検査を行い、作物にどういう処置がなされてきたかの記録を徹底調査する。カリフォルニア州農薬規制庁とも連携して、有機栽培で認められている農薬だけが用いられていることを確認するのだ。同時に、州に対して有機栽培を行う面積と、作物の種類について登録申請を行う必要もある。検査に合格すると(その上で、認証機関と州に規定の料金を払うと)、その畑のブドウは「有機農法で栽培された」とラベルに表示することができるようになる。認証を得た生産者はその後も年に一度、検査員による土地および記録の調査を受けることになる。

イースト・ベンチは、「有機農法で(および持続可能な方法で)栽培されたブドウ」を用いて造ったと、初めてラベルに表示される自社畑産ワインとなった。我々の有機栽培認証獲得の動きにおいて、イースト・ベンチは実験台であった。ブドウの樹齢が若く、単一種の土壌を持つ小さな一区画の畑であり、すべての土地がなだらかで大半は平坦な台地に位置していたからだ。端的に言うなら、最も簡単だったから選ばれたということになる。一方、リットン・スプリングスの畑はというと、5種類の異なる土壌がある上、多数の区画に分かれている。樹齢にも大きな幅があるし、地形も平坦地、斜面、丘陵の中腹と多様なのだ。

有機栽培という挑戦に関して我々は、ゆっくりと注意深く歩みを進めてきた。それが今日、我々はソノマ郡とサンタ・クルーズ・マウンテンズAVAで最大の有機栽培実践者となっている。有機栽培の認証獲得は、我々のブドウ栽培が慣行農法の化学農薬や添加剤を使わなくなることにより、我々のワイン造りと同じぐらい伝統的になることを目指したものである。

2015年3月
デイヴィッド・ゲイツ(栽培担当副社長)
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