連載コラム Vol.246

果汁を搾る/プレスの作業とプレス・フラクション その1

2014年11月14日号

Written by エリック・ボーハー

空気圧プレス(別名 膜プレス)は、我々が収穫時期に用いる醸造機器のひとつである。水圧式プレスや、連続式スクリュープレスと異なるのは、このプレスが低い空気圧で膜を膨らませて搾る点だ。発酵を終えた黒ブドウからワインを搾ることもあれば、発酵前に白ブドウを房ごと搾ることもある。(モンテベロ・ワイナリーにある)2台のプレス機は、9月から10月にかけて頻繁に使用される。用途のほとんどは発酵後の黒ブドウの圧搾になるが、時折収穫されたばかりのシャルドネを搾ることもある。

ジンファンデルのように果粒の大きい品種の場合、プレスワインは最終的な搾汁収量(果実1トンあたり何ガロンの液体が取れるか)の30%を占める。果粒の小さい品種の場合は20%程度である。収穫されたブドウの品質が高ければ、プレスワインを加えることで色の深みやタンニン、スパイス風味が増し、品質や複雑性を大いに高めることができる。

ジンファンデルのプレスワインは特に、その味わいにおいてフリーランワインに匹敵しうるのだが、それは主にこの品種のタンニンが強くないためである。モンテベロの畑に植わるボルドー品種やペティト・シラー、リットンの自社畑に植わるシラーなど、もっとタンニンの強い品種では、プレス作業中に異なる圧力下で得られる果汁のロット(フラクション)を、分けて管理することが必須となる。タンニンの強い特定のヴィンテージにおいては、モンテベロを醸す発酵タンクから得られたプレスワインを、最大で7つのフラクションに分けたことがある。

最初に得られるフラクションは、「タンク・ドレイン」と呼ばれるものである。これはフリーランワインの残りであり、果皮から一晩かけて少しずつ流れ出てくる。圧力はまったく加えられていない。(フリーランワインを採取したあと)果帽に残っているワインのうち、搾らずとも出てくるものを集めるだけである。果帽に染み込んだフリーランワインとでも言うべきもので、色が濃くタンニンに富み、とても果実味が強い。通常、このフラクションについては、同じロットのフリーランワインに混ぜてしまう。
(次回に続く)
2013年6月以前のコラムはこちらから