連載コラム Vol.237

1964-2014 ジンファンデルの50年 その3

2014年6月30日号

Written by ポール・ドレーパー

(次回からの続き)
1971年から72年にかけての冬、冷たい雨が降る日のこと。ディック・シャーウィンに連れ立って私は、彼が所有するヴァレー・ヴィスタの畑で泥を踏みながら歩いていた。この畑は、リットン・スプリングス・ロード沿いにあったのだが、太くねじまがった幹をもつ株仕立ての古木に心引かれ、この年シャーウィンから果実を買うことにした。2年後にワインを発売するにあたって、私のつけた名が「リットン・スプリングス」である(この畑をリッジは、1990年に買収することができた)。1972年にはまた、アンダーソン・ヴァレーの北にあったジョージ・ゼニの畑からも、古木のジンファンデルを購入している。1973年には、ジョン・ガントナーがセント・ヘレナの北に所有するスクール・ハウス・ヴィンヤードの畑から、初めてラングトリー・ロードという名のワインを仕込み、その生産はそれから数年続いた。1974年にはシエラ・フットヒルズ地区で畑を探し、フィドルタウン、エソーラ、ストーニー、バルディネッリの各畑からジンファンデルを造っている。

それ以降、我々は30以上にのぼる古木の畑からジンファンデルを仕込んできており、その中にはハウエル・マウンテンのパーク・マスカティーンやベーティ、サクラメント川デルタ地帯にあるエヴァンゲーリョ、ソノマにあるナーヴォ、マゾーニ、ブキニャニ、パガニ、ポンゾ、イースト・ベンチといった畑が含まれている。

昨年秋、私はニューヨークにあるカフェ・ブールーでの夕食会に招かれた。この夜のワインはすべてリッジで、すべて40〜50年経ったものだった。1973年のガイザーヴィルと、1974年のリットン・スプリングスが含まれていた。夕食会を主催した収集家のひとりが、40年経ったガイザーヴィルについてこう言ってくれた。「今夜の中で一番です……ラベンダーや野苺のすばらしい香りがあって……長い余韻は何重にも折り重なっていて、偉大なジンファンデルがどれだけ熟成できるかを見せてくれています」。その上でこう続けた。「リットン・スプリングスの雄々しい骨格が、ずいぶん丸くなっています……グラスからは黒系果実が……滑らかで、余韻は素敵に長い……ガイザーヴィルと逆のワインで、比べながら飲むのにうってつけです」

ジンファンデル生産50周年を祝うのに、これほどの褒め言葉があろうか!

ポール・ドレーパー(2014年2月)
2013年6月以前のコラムはこちらから