連載コラム Vol.233

旱魃の影響を減らす

2014年4月30日号

Written by デイヴィッド・アマディア

2014年度に入ったが、高級ワインを取り巻く市場環境については大いに楽観視できる。とはいうものの、旱魃が次の収穫にどれだけ影響するかについては、カリフォルニアに暮らす誰もが案じずにはいられない。

2014年度のワイン市場には、好ましい要素が多く見られる。高級ワインの販売量は、最大で10%もの伸びを示すだろうと予想されている。量の少ないヴィンテージが2年(2010年、2011年)続いたあと、市場に出てくる2012年は、たっぷりの量と驚くべき質の高さが見事に両立しているのだ。だがこうした楽観主義も、公式発表で3年目を迎えた旱魃という現実によってしぼんでしまう。 2013年は、1849年の記録開始以来、最も雨が少ない年になった。平年であればモンテベロには年間30インチ(762mm)、リットン・スプリングスなら40インチ(1,016mm)弱の雨が降る。だが昨年の7月以降、どちらの場所にも3インチ(76mm)以下しかまだ降っていないのだ。現時点でもかなりの確信をもって、2014年の収穫量が平均以下になると予想できる。

リッジでは、旱魃がブドウ樹に与える影響を和らげながら、望みうる最高の果実を得るための手段を講じている。剪定を通常よりもさらに厳しく行なうことで、ブドウ樹に成る果実の量を減らし、ブドウの成熟に必要な水の量を減らす。毎年行なう耕作作業(不要な枝の除去、除草、除葉、摘房)を、すべて早めに行なうようにする。我々の畑で灌漑がなされるのは若木だけで、根が伸びるのを助けるためである。だが今回、ワイナリーの創設以来はじめて、残りの畑にもドリップ式灌漑の設備をした。もし旱魃が続いたとしても、樹齢の高い樹が生き残るために必要とするギリギリの量の水だけを与えることができる。この先雨が降ったとしても、今年の夏には収穫量水準を注意深く見守り続け、樹が成熟させられるだけの果実しか成らないように気をつける。適度な管理がなされれば、旱魃の年には素晴らしい凝縮感と熟成能力を備えたワインを生み出すことができる。

リッジではまた、水の使用量を減らす資源保持活動も行なっている。

  • ? 畑の鋤き起こしの回数減、堆肥の増量、被覆作物の植え付けによって、土壌中の有機物量を増やしてきている。すべて、土壌中の水分量保持に役立つ。
  • ?ワイナリーで出た廃水を再利用し、若木の灌漑に用いている。リットン・スプリングス・ワイナリーではすでに十年以上の実績があり、モンテベロ・ワイナリーでも昨年大規模な投資を行ってバイオ リアクターを設置し、水の浄化を始めている。
  • ?フルイション・サイエンス社製の樹液流動計を用いてブドウ樹の観察を行なっている。最先端のブドウ樹用技術で、必要なときにだけ、最小限の水で灌漑が行なえるようになる。

2014年の今、空は晴れ渡っているが、市場にはチャンスの雨が降り注いでいる。とはいえ、天候も市場も良し悪しにはサイクルがある。いずれ雨は降るだろうし、市場の状況も厳しくなるだろう。その中でリッジは、資源保持、品質の維持、環境への配慮を続けるだけである。

デイヴィッド・アマディア
リッジ・ヴィンヤーズ 販売・マーケティング部門副社長

2013年6月以前のコラムはこちらから