連載コラム Vol.228

モンテベロの歴史あるブドウ畑 その1

2014年1月31日号

Translated by 立花 峰夫

現在、モンテベロの自社畑となっている土地は、19世紀末から20世紀はじめにかけて開墾され、ワイン用のブドウが植えられた。その当時は所有者が四人いて、いずれも面白い人物であった。

●トーレ農園 Torre Ranch
ネヴァダ州で畜牛農場を経営し、成功を収めたジョン・トーレは、1890年にモンテベロの尾根に100エーカーの土地を買い、ブドウ樹を植えた。斜面に穴を穿ってワインセラーを造り、その上に納屋も建てている。1908年になると、ジョンの甥ヴィンセントとその妻ドミニカが、ネヴァダからモンテベロへとやって来て、ブドウ畑をワイナリーの運営を引き受けた。ジョンが1913年に死ぬと、その地所をこの夫婦が相続している。このトーレ・ワイナリーで生産されていたのは大半がジンファンデルで、売られたワインは鉄道でニューヨークまで運ばれていた。

禁酒法によって、トーレ・ワイナリーは1920年に廃業となり、ブドウ樹も時間とともに枯死していった。それから何人か持ち主が変わったあと、ウィリアム・ショートがこの土地を買いとって、カベルネ・ソーヴィニョンと少量のシャルドネを植えなおしている。だが、1959年になると、ショートは畑仕事に飽いてしまい、スタンフォード大学研究所に勤める四人の科学者たちに土地を売った。

当初、科学者たちはブドウをそのまま売ってしまうつもりだったのだが、メンバーのひとりデイヴ・ヴェニオンが、1959年に収穫された果実から半樽のワインを仕込んでみた。ベニオンにとって、初めてのワイン造りであった。その品質に自信を持った科学者たちは、古いワイナリーを再設立することにし、後にリッジ・ヴィンヤーズとなる起業に乗り出した。

デイヴと仲間たちは、それから7年間商業ベースでワインを生産している(1962〜1968年)。1962年と1964年のワインを味わい、その卓越した品質に感銘を受けたポール・ドレーパーが、醸造責任者としてグループに加わったのが1969年である。ポールは、1969年ヴィンテージについては一部手助けをしただけに留まったが、続く1970年、1971年ヴィンテージから采配を振るうようになり、1971年については昔のトーレ・ワイナリーの建屋で生産されている。

現在、モンテベロに残る最も古い樹は、ウィリアム・ショートが1949年に植えたものである。かつてのトーレ・ワイナリーの建物は、現在テイスティング・ルームおよび事務所として利用されている。
(次回に続く)

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