連載コラム Vol.224

原料ラベル表示に対する欧米プレスの反応 その1

2013年11月29日号

Written by 立花 峰夫

2011年ヴィンテージより、リッジでは醸造工程で用いられた原料、添加物をすべて裏ラベルに記載するという自主的な取り組みを始めた(2013年6月の当コラム「ワインの中には何があるか?」参照)。この勇気ある実践に対して、欧米のワイン関連プレスがどのように反応したか、今回と次回で紹介したい。

「リッジ・ヴィンヤーズがラベルで完全に 情報を公開」
ザ・ワシントン・ポスト/2013年5月7日
筆者: デイヴ・マッキンタイア
「カリフォルニア州の高級ワイナリーであるリッジ・ヴィンヤーズが先日、2011年ヴィンテージより、ラベルに原料と醸造時の『処置』をすべて表示すると発表した。高名なワイナリーによる今回の動きは、他のワイナリーにも原料表示を促し、醸造時に用いられる添加物や現代的技術に対する、消費者の関心を高めるのではないだろうか。
一年前にもここに書いたが、ワインラベルに原料を表示することは、ワイナリーに義務として課されてはいるわけではない。カリフォルニアのボニー・ドゥーン、ロング・アイランドのシン・エステートなど、少数の実践者はこれまでもいたが、潮流を産むには至らなかった。だが、リッジの影響はもっと大きいかもしれない。同ワイナリーによる単一畑産のジンファンデル・ブレンドや、モンテベロ産のカベルネには、熱心なファンが多数いるからである」

「知られざるワインの原料」
インサイド・スクープSF/2012年10月10日
筆者: ジョン・ボネ
「……このほかにもひとつ、基本的な原料がある。うんとシンプルでありふれているにも関わらず、話題に上ることは滅多にないもの。そう、水である。
 ……しかし、この水の話題は、カリフォルニアワインの大立者、リッジ・ヴィンヤーズのポール・ドレーパーによって、これから表面に出ようとしている。先日彼を訪ねたとき、連邦当局の承認を待つばかりとなった、リッジのパソ・ロブレス・ジンファンデル 2011のラベルを見せてもらった。ラベルの中には原料のリストがあったのだが、普通の原料以外のものが書かれていたのだ。――ブドウ、天然酵母、亜硫酸――加えて、『1.4%の水分添加』と。
確かに標準的な技術ではある。この場合、高い糖度で収穫された熟れたブドウの、バランスを是正するのがその目的だ。だが、ラベルにわざわざ表示するだろうか?ワイン業界にうちの祖母がいたなら、『破廉恥じゃあ』とでも言っただろう。
……ドレーパーは、サンタ・クルーズの隣人〔ボニー・ドゥーンのランダール・グラムのこと〕に負けないぐらい、原料リストが好きなのだとわかった。彼は1980年代という早い時期にも、リッジのラベルに原料を表示しようと試みているのだ……しかしこの時には、アルコール・タバコ・火器・爆発物取締局が許可しなかった。だから、今回の原料表示の動きは、リッジの伝統に則したものと言えるのである。……」

「リッジ・ヴィンヤーズがラベルでの完全な情報公開を提唱」
デカンター/2013年3月13日
筆者:デイヴィッド・フューアー
「……60種ほどの添加物が、ワイン醸造時に使用しても安全なものとしてアメリカでは認可されている。そのうちの多くは天然の物質である。原料表示は義務的なものではないが、もし一種類でもラベルに表示することをワイナリーが選ぶと、使用したものすべてを表示しなければならなくなる。
リッジの醸造担当副社長 エリック・ボーハーは、デカンターの取材に対して次のように答えた。『もう長いあいだ、原料表示については議論してきたのです。私たちのブドウは、あれこれ弄くりまわさなくても、優れたワインになってくれます。ポール(・ドレーパー)は、80年代から原料表示をしたがっていて……』」

(次回に続く)

2013年6月以前のコラムはこちらから