連載コラム Vol.223

ワールド・アトラス・オブ・ワイン 第7版について

2013年11月15日号

Written by 立花 峰夫

世界一高名なワイン本と言えば、やはり『ザ・ワールド・アトラス・オブ・ワイン The World Atlas of Wine 』の名があがるだろう。一言でこの本を表わすならば、ワインの世界における究極の地図帳。本書には国ごと、地域ごとに精細な地図が多数掲載されており、その傍らにはその産地の特色・有名生産者などを紹介する簡にして要を得た説明が添えられている。「土地の個性」が何よりも重視される高級ワインの世界にあって、これ以上の手引書はないと言ってよい。極言すれば、この本一冊で世界中のワインがわかる。

初版が1971年に発売されてから、数年ごとに改訂新版が出されてきた。2007年出された第6版までの累計で、実に400万部が売れている。ワイン本としては、未曾有のベストセラーである。英語を含む14の言語に翻訳されており、初版、第5版、第6版は日本語にも翻訳された(第6版の邦題は、『地図で見る図鑑 世界のワイン』 ガイアブックス刊)。著者は、初版から第4版までが重鎮ヒュー・ジョンソン。第5版以降は、イギリスワイン業界最高の知性との誉れ高いジャンシス・ロビンソン女史が加わって、ヒュー・ジョンソンとの共著となっている。

さて、この2013年10月に、待望の第7版が発売になった。本の構成自体は従来の版から変化していないが、随所に情報のアップデートが見られる。いずれ日本語訳が出ると思われるが、待ちきれない方は原書を買って、ひとまず地図を眺めていただくだけでも十分楽しめるだろう。

最新の第7版でも、2箇所でリッジが登場している。カリフォルニアのワイン産地は、全部で10のエリアに分けて解説されているのだが、そのうちの「サンフランシスコ湾南部 South of the Bay」と、「ソノマ郡北部 Northern Sonoma」である。解説文中にリッジについての記述があるほか、モンテベロとガイザーヴィルのラベル画像も掲載されている。以下には、「サンフランシスコ湾南部 South of the Bay」のパートに記された、モンテベロについての紹介文を引用しておこう。

「この地域のリーダーはリッジ・ヴィンヤーズである。霧が届かないほど高い尾根にあるワイナリーで、片側には太平洋が、もう片側にはサンフランシスコ湾が見下ろせる。モンテベロ・ヴィンヤードと呼ばれる標高の高い畑から生まれるカベルネは、世界で最良かつ最も寿命の長い赤ワインである。その秘密は、樹齢の高いブドウ、急斜面の痩せた土壌、そしてポール・ドレーパーによる洞察に満ちた「保守主義」にあろう。熟成は、ほぼ全量が天日乾燥させたアメリカンオーク樽だが、必要とされる長期間の瓶内熟成を経ると、ボルドーのような味わいとなる。リッジはまた、ソノマやパソ・ロブレスに植わるジンファンデルの古木を用い、ソノマ郡ヒールスバーグ近くにあるリットン・スプリングス・ワイナリーでもワインを生産している。」

2013年6月以前のコラムはこちらから