連載コラム Vol.217

中国のワイン事情

2013年7月31日号

Written by デイヴィッド・アマディア

リッジがはじめて、イギリスやフランスにワインを輸出したのは1970年代の前半である。今日の世界的な名声は、その頃から少しずつ積み上げられてきた。世界的な名声を得ようとするなら、国際的な商流は必要欠くべからざるものだ。今では、リッジは世界50カ国に販売されており、ロンドン、パリ、モスクワ、東京、上海ではトップ・レストランのワインリストに掲載されている。

昨今、中国のワイン市場についての議論がかまびすしい。尤もなことではある。ほんの少量であれ輸出をしているワイナリーなら、指数関数的に拡大する中国市場を無視はできない。ボルドーの生産者たちがむさぼる暴利にも、自由にできるお金を持った消費者が増えていることにも気を引かれるだろう。

ワイン消費量の増大は、いかに元が小さいといえども目覚しいものである。2007年から2011年にかけて、中国のワイン輸入量は年に55%のペースで増え続けた。今や中国は、世界で7番目のワイン消費国であり、この先3〜5年でさらに倍増すると見込まれている。

現時点で、2000万人の中国人がワインを日常的に飲んでいる。13億人の人口のうち、日常的にワインが飲める可処分所得を持つ層が、すでに2億人に達している。この数字は驚嘆すべきものであり、輸入ワインの未来は光り輝いている。

とは言うものの、短期的に見れば成長の障壁は存在する。カリフォルニアワイン、高品質志向の生産者のワインにおいて、とりわけその傾向が強い。

・ワインの過半数(60%)が、本人の楽しみのためではなく、贈答用に購入されている。ワインは貴重品と
  みなされているので、贈られた側はたいてい喜び、贈った側の面目も立つのである。
・ブランドによって買う/買わないがおおよそ決められており、実際の品質にはほとんど注意が払われて
  いない。味がわかり、自分の意見も持っているような洗練された愛好家層は、まだまだゆっくりとしか増
  えていない状況である。
・ワインの生産国偏重がまだまだ根強い。フランス産が、全輸入ワインの半分以上を占めている。カリフォ
  ルニアは、フランス、オーストラリア、スペイン、イタリア、チリの後塵を拝する第6位で、シェアはたった
  5%しかない。中国人消費者の間では、カリフォルニア産と「高級ワイン」の結びつきが弱い。
・目下のところ、中国で主流のカリフォルニア産ワインは、低価格帯のものである。そのせいで、「カリフォ
  ルニア産は世界トップクラスのワインではない」という印象が生まれている。

こうした障壁は、乗り越えられないものなのだろうか。

私が引いたおみくじ入りクッキーによれば、そんなことはないそうだ。長期的には、カリフォルニアもこの市場において、重要な位置を占めるようになるだろう。(ボルドー以外の)高級ワイン生産者たちも、多数でこそないかもしれぬが大事な顧客を中国で獲得するはずだ。その鍵となるのは、中国人ワイン消費者の成長である。時が経ち、経験や教育を手にいれた人々が、巨大な中国の外へと旅するようになれば、自然とそうなるに違いない。

デイヴィッド・アマディア
(リッジ・ヴィンヤーズ 販売・マーケティング部門副社長)

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