連載コラム Vol.216

ガイザーヴィル2008年が、
オバマ&習近平会談の晩餐会で!

2013年7月19日号

Written by 立花 峰夫

2013年6月7日・8日、アメリカ・カリフォルニア州サニーランズの保養所で、バラク・オバマ大統領(アメリカ合衆国)と、習近平国家主席(中華人民共和国)の首脳会談が行われた。その晩餐会(7日)の席で、メインディッシュのポーターハウスステーキともに饗された赤ワインは、リッジが誇るジンファンデル・ブレンド、ガイザーヴィルの 2008年ヴィンテージであった。

美食外交、食卓外交という言葉がある。首脳クラスの晩餐会のメニューともなると、単に美味しいものを集めただけでは当然なく、料理の一皿一皿、ワインの一本一本にそれぞれ政治的な意図が存在する。ナポレオン戦争時代のフランスの外交家、タレーラン=ペリゴールは、シャトー・オー=ブリオンというボルドー最高の赤ワインと、伝説の料理人アントナン・カレームの豪華な料理によって、ウィーン会議の勝者となった。今回選ばれたガイザーヴィルも、中国に対してアメリカの国力を誇示するという役割を担っていたに違いない。

急速な経済成長を続ける中国は、GDPで日本を抜き、アメリカに次ぐ二位に躍り出た。昨今は、ワインの分野でも輸入・生産の両面で大国になりつつある。その中国のトップに対して出された赤ワインが、ジンファンデル主体のものだったのは意味深に思われる。単に値段だけで考えれば、ナパ産のカベルネなど、ガイザーヴィルよりも高価なワインは多数あるのだから。ジンファンデルが選ばれた理由は、おそらくアメリカの「固有品種」だからだろう。ヨーロッパの文化・伝統に連なりながらも、独自の価値観で唯一無二の大国となったアメリカを、このブドウ品種は象徴している。そして、数あるジンファンデルのワインの中で、選ばれたのはまたしてもリッジであった。

なお、この日の料理は、アメリカを代表する有名シェフのひとりで、ミサ・グリルなどのレストランを経営する ボビー・フレイが担当した。

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