連載コラム Vol.371

深刻化する山火事の原因

2020年12月11日号

Written by 立花 峰夫

2020ヴィンテージは、カリフォルニア全土が収穫時期の山火事に苛まれた年だった。過去数年、カリフォルニアでは毎年のように晩夏から秋にかけて山火事が起きるようになっているが、今年のものは史上最大規模であった。その焼失面積は、約1.6万平方キロと、東京都の8倍近い面積に、被害が出ている。さいわい、リッジについてはその被害はごく限定的なものに留まってくれたが、カリフォルニアワイン業界全体で見れば、決して小さくない影響が発生した。

山火事の直接的な原因は、地球温暖化に伴う高温と乾燥が第一だが、人的な要因もそこには影響している。ひとつは、森林保護を目的とする州の条例によって、下生えの伐採が1960年代から禁じられていること。森の地面を莫大な量の枯れ草が覆っており、一度発火するとすぐに激しく燃え広がる素地があるのだ。電力自由化によって、電力会社の経営基盤が競争によって弱体化し、森林内の送電線管理が行き届いてないことも、原因のひとつとして指摘されている。送電線に木の枝が触れないよう、定期的に手入れをする手間とコストをかけられなくなっているのだ。キャンパーや野宿者による火の不始末が、原因になった火災も少なからずあると見られている。

山肌を切り拓いて植えられたブドウ畑が、森林火災の原因になることもある。9月末からナパ全体へと燃え広がり、多くのブドウ畑とワイナリーに被害を及ぼしたグラス・ファイアは、ブドウ畑に鹿が入ってこないようにするために設けられた、電柵が発火原因だと目されている。このように見てくると、一般に天災だとみられがちな森林火災が、ほとんど人災だという気もしてくる。

そもそも、地球温暖化そのものが、人類の活動によって起きたものだと考えるならば、昨今のカリフォルニアにおける森林火災の頻発は、100%人災だとも言えるだろう。21世紀に入って以降、カリフォルニアのワイン業界は、環境保護・持続可能なアプローチへと舵を切っているが、これまで以上にその動きを深化させることが求められている。

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