連載コラム Vol.369

モンテベロ・ワイナリーでの瓶詰め その3

2020年10月14日号

Written by エリック・ボーハー

4. ワインによって工程が異なる場合はあるのだろうか?
「唯一の違いは、6リットルの大瓶への充填だ。ボトルが大きすぎて物理的に充填機を通すことができないし、直径の大きなコルクも自動打栓機に収まらない。このような大瓶には手で充填し、多様なコルクに対応できる特別な手動打栓機を使用している。
ほかにも小さな違いはあり、それはボトルの種類と容量によるものだ。375ml瓶には、750ml瓶とは異なるスクリュー状の供給機とスターホイールが必要になる。ブルゴーニュ瓶とボルドー瓶でも違いはある。それぞれ、滑らかにラインを流れるようにするためには、部品交換が必要だ。ボトルが大きすぎると、窒素注入機のところで動かなくなったり、充填機台座の中央に収らず、うまく充填できなかったり、打栓機にもうまくかからない可能性がある。そうした大瓶がうまく流れるようにするためには、あれこれ新しい部品に交換しなければならない」

5. リッジの瓶詰め工程は、透明性を確保し、前・工業的なワイン造りを行うというそのミッションとどのように関係しているのだろうか? 他のワイナリーと違いはあるのか?
「どのワイナリーにも、独自の瓶詰め方法がある。大規模ワイナリーではたいてい、多数の拠点で造られたワインを集約して瓶詰めを行っており、ワインはタンクローリーで共通の瓶詰め施設に運ばれる。そうした瓶詰め専用施設は、1日24時間、週7日稼働し、超大規模ワイナリーの傘下にある複数のブランドのワインを瓶詰めすることができる。
一方で、非常に小規模なブティック・ワイナリーの場合、自社で瓶詰めラインを購入して設置するコストは、あまりにも大きな投資となる。そうしたワイナリーのためには、トラックでやってきて、そこの製品を瓶詰めしてくれる移動式瓶詰め業者がある。通常、そのような小規模ワイナリーでは、年に一度だけこうした移動式業者を呼び、当該ヴィンテージのワインをすべて瓶詰めすることになる。
リッジは常に、ブドウ樹から瓶詰めまでのあらゆる側面を、(ボルドー)格付け一級シャトーと同じような厳密さで管理するという哲学を持っている。その水準の生産管理を行うことではじめて、前・工業的ワイン造りのアプローチに則し、細心の注意を払って仕込まれたワインを瓶詰めすることができるのだ。この考えは、表ラベルに記された、『Grown, Produced, and Bottled by Ridge Vineyards(リッジ・ヴィンヤーズによって栽培、醸造、瓶詰めされた)』という重要な文言で示されている。
この文言は、リッジが自らブドウを栽培し、収穫し、ワインを造り、自社拠点であるモンテベロ・ワイナリーかリットン・スプリングス・ワイナリーのどちらかの場所で、瓶詰めしたことを表わしているのだ」

エリック・ボーハー(モンテベロ・ワイナリー醸造責任者兼COO)

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