連載コラム Vol.368

モンテベロ・ワイナリーでの瓶詰め その2

2020年9月30日号

Written by エリック・ボーハー

3. 瓶詰め工程にはどんな段階があり、それぞれの段階にはどのくらいの時間がかかるのか? 「ワインの瓶詰めには10の段階がある。ワインを樽からタンクに運んだりといった、瓶詰めの事前準備はそこに入っていない。事前準備だけでも計画とセラーでの作業に数週間を要する。ワインは瓶詰めラインの上のタンクに移動された後、重力によって充填機に供給される。

瓶詰めの最初の工程は、空の瓶を投入コンベアに供給することだ。瓶は、円状になった瓶の埃除去装置兼窒素注入機へと巻き上げられる。瓶がこの輪の上を動いて倒立すると、中身の空気が吸い出されたあと、圧縮空気がダンボール箱由来の埃を吹き飛ばす。瓶が投入コンベアに戻る直前の数秒間には、重窒素ガスが注入される。

瓶はそのあと、ライトボックスの前を通り過ぎるので、検査員が美観上の、あるいは構造上の欠陥がある瓶を取り除くことができる。その後、スクリュー状の供給機とスターホイールが瓶を、MBFシンクロフィル充填機の台へと導く。瓶が充填機の注ぎ口に向かって持ち上げられると、注ぎ口が開き、ワインが瓶の中に入る。その上から窒素を注入して酸素を完全に除去し、ワインを保護する。

瓶は充填機の台を離れ、別のスターホイールが打栓機の台へと瓶を移動させる。コルクが最初に投入されるのは、瓶詰めライン上の中二階に据えられた供給機だ。コルクは振動を与えられながら空気圧で吸い込まれ、埃やゴミが取り除かれる。コルクは供給機へと落ち、打栓機に設けられた4つの穴のうちのひとつにはまる。ピストンがコルクを瓶口に押し込むのだが、その前には瓶口内側の空隙部分の空気を吸い出して真空状態にし、一方で打栓機の穴が収縮して二段階でコルクを圧縮する。この工程で、コルク表面にある小さな孔の中に溜まった、コルクくずを取り除くことができる。

コルクの打たれた瓶が一体構造の打栓機から出てきて、センサーがコルクの有無を確認すると、そこに立っている作業員がキャップシールを手で瓶口の上に載せる。その後、瓶が巻締機の下を通過すると、錫製のキャップシールが瓶の首部分とコルクの上にしっかりと巻き付けられる流れだ。リッジで使用しているキャップシールは標準的なものよりも短いので、コルクの下部数センチは覆われず、瓶詰めされているワインのヴィンテージを確認することができるようになっている。多くの消費者がコルクの状態や、ワインがどれだけワインに浸み込んでいるか、また瓶内熟成による中身の目減りが起こっているかどうかを見たいと考えているので、これは何十年もの間、リッジでの決まり事になってきた。

キャップシールの巻き付けが終わると、瓶は加圧接着式のラベル貼り付け機へと運ばれる。その後、荷台へと移動した瓶は、その下部にレーザーで情報が刻印される。このトレーサビリティ情報には、使用されたコルクのロットと充填日時が記載されており、品質に問題があった場合に、どのロットのものかを辿ることができるようになっている。瓶詰めの時点まで立ち返って、品質の問題を追跡することができるのだ。

次に、コルクがワインに触れず、瓶口内部で乾燥して十分に膨らむように、瓶をその首の部分を上にして箱詰めする。コルクが、瓶口内部において圧縮された状態で安定するまでには数日かかる。 ワインを詰めた箱は、やはり瓶口を上に向けた状態でパレットに積載される。ただし、保管用の倉庫に移動されたあとは、パレットを上下ひっくり返すのだ。これにより、瓶口が下を向いた状態になり、コルクがワインで濡れた状態で保管されるため、その構造が望ましい状態で保たれるようになる。リッジのワインを長期熟成させるには、これが一番の方法なのである」

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