連載コラム Vol.367

モンテベロ・ワイナリーでの瓶詰め その1

2020年9月4日号

Written by エリック・ボーハー

リッジのようなワイナリーがどのようにして、品質と一貫性を維持しながら瓶詰め工程を管理しているのかについて、考えたことはないだろうか。モンテベロ・ワイナリーの醸造責任者兼COOであるエリック・ボーハーは、以下にまとめた質疑応答の中で、リッジがどのようにして、なぜこのような方法でワインを瓶詰めしているかについて、詳しく説明してくれた。

1. リッジの瓶詰め工程は、モンテベロ・ワイナリーでどのように行われているのか?
「当初から、創業者たちは生産したワインをすべて敷地内で瓶詰めしていた。初期の頃は、その工程のほとんどが手作業で、ひとつずつ樽を空にしていたんだ。充填、コルクの挿入、キャップシールの巻き付けがすべて人手の作業で、ラベルは接着剤付きのローラーを使って、ボトルに貼り付けていた。すべてが手作業だったから、一日に瓶詰めできるのは4樽がせいぜいだった。初期のヴィンテージは生産量が少なかったので、そんな方法でもちょうどよかったのさ」

「1970年代に入って、ワイン醸造設備を山の上方に1マイルほど移動させると、創業者たちが仕込みに使えるスペースは増えた。ブドウ畑が広がり、自社畑産の果実の扱い量が増えたからさ。とはいえ、リッジはまだ、瓶詰め作業や、箱詰めされた商品の保管、販売のために、もともとのワイナリーも維持していた。だから、平台トラックにしつらえたタンクに樽の中身を移し、瓶詰めのために山を1マイル下って行く必要があったんだ。リッジはこの面倒を避けるために、醸造設備と同じ敷地内に、新しい瓶詰め場と貯蔵庫を作る計画を立てた。そうして1980年に、アルマセン・ビルと呼ばれる建屋の建設が完了し、瓶詰めラインが設置されたんだ。このラインはほとんどが自動化されており、ドイツ製の最高級充填機、イタリア製の「スーパー・グロリア」打栓機、ドイツ製のキャップシール巻き付け機が組み込まれていた。もうひとつのドイツ製の機械、クローネス社製の自動ラベル貼り付け機は、ロール状になったワインラベルを、高速で瓶に貼り付けることができたんだ」

「このときから、リッジによる品質管理の最終工程の精度が高まり、仕上がったワインの優れた熟成能力がより一層保証されるようになった。その瓶詰めラインは、役目を終えて、より新しく機能的にも優れた瓶詰め機器に刷新されるまで、使い続けられた。2001年に、1999年ヴィンテージの瓶詰め準備が整ったとき、新しいラインが完成したんだ。イタリア製のMBFシンクロフィル充填機を導入したんだが、これは打栓機と一体構造になっている。この装置は今も使用されていて、充填中のワインを酸素から守るために、最高水準の管理が可能なんだ。一体構造になっていて、充填機の注ぎ口からすぐ打栓工程に進めるから、遅延が発生せず、酸素がワインに触れることがないのさ」

「もうひとつの刷新は、クローネス社製機器の液体接着剤を使った巻き付け方式から、加圧接着式ラベルへの切替えをしたことさ。加圧接着式では、ラベルが強力な接着剤付きの用紙に印刷される。充填された瓶がラベル貼り機を通って回転すると、表と裏のラベルが一枚ずつ、正しい位置にぴたりと貼り付けられる。今では、ほとんどのワイナリーがこのラベル貼り技術を使っているよ。総じて言うと、この瓶詰めラインはワインに非常に優しく、かつ効率的な速度で稼働してくれる。最高速度は毎分100本だが、リッジでは平均して1分間に約60本に留めているよ。ワインを優しく扱うためには、能力の高い機械を、余裕をもって稼働させるのが最善だと知っているからなんだ。そのほうが、装置の消耗も少なくてすむ。この瓶詰めラインは、50年以上もつだろうと思うよ」

2. 瓶詰めラインでは誰が働いているのか?
「リッジの製造チームは大変な働き者ぞろいで、円滑な瓶詰め作業が常になされるように、機器のメンテナンスに気を配ってくれている。10人のスタッフが、瓶詰め作業の各工程を担い、さまざまな作業を行っているのさ。ひとりは瓶をラインに投入し、もうひとりが充填前のボトルを揃える。充填してコルクを打ったボトルが一体構造の機器から出てきたら、キャップシールをラインに補充する役目の者がいる」

「瓶詰めラインの調整・メンテナンスを担うふたりの担当者が毎日立ち会って、機器の目視検査を行い、衛生面を確認し、すべての機器が正しく作動しているかどうかをチェックする。品質管理全体を見ているんだ。完成した瓶をラインから持ち上げて、箱に詰め直す役割の人間もいる。もうひとりが、箱に封をして木製パレットに積み上げていく。倉庫長がフォークリフトを使って、満量積載されたパレットを移動させ、空のボトルをラインのスタート地点まで運んで来るという流れさ」

「常勤のトラック運転手(収穫期にはブドウも運んでいる)が、シリコンヴァレーにある倉庫へと、ワインを積んだパレットを運び、その帰り道ではアルマセン・ビルに、空瓶を届けてくれる。以前は、空瓶を業者から直接ワイナリーに届けてもらっていたのだが、モンテベロの山道は不慣れなトラック運転手にとっては難しい道で、パレットがひっくり返ったり、ガラスが割れていたりすることがしょっちゅうあったんだ。その点、リッジの常勤運転手は道路を熟知しているし、山道を上り下りする自転車や、山を下りたあとの交通渋滞を避けるために、道が空いている時間帯に運転することもできるんだ」

「瓶詰めラインで働いているスタッフ全員が、長年ずっと勤続してくれていて、主立った連中は20年以上も瓶詰めラインの運営に携わってくれているよ」

2013年6月以前のコラムはこちらから