連載コラム Vol.252

モンテベロの再植樹 最新情報 その3

2015年2月16日号

Written by デイヴィッド・ゲイツ

(前回からの続き)
下記は、モンテベロのルーステン農園にこれまで植えたクローンの解説である。

<カベルネ・ソーヴィニョン>
1.ファウンテングローヴ・クローン
1890年代にサンタ・ローザ近くの村に植えられていたブドウ樹から繁殖したもの。このクローンは1946年、禁酒法時代に打ち捨てられていたモンテベロの畑に、カベルネを再植する際用いられたものである。

2.ラ・クエスタ・クローン
マーティン・レイが1940年代に、マウント・エデンに植えていたブドウ樹から繁殖したもの。レイのブドウ樹は、ウッドサイドにあったリックスフォードのラ・クエスタ・ワイナリーから来たもので、そちらは1884年に植えられている。もともとは、マルゴーから運ばれた穂木である。

3.マウント・エデン・クローン
ラ・クエスタ・クローンと基本的には同じ遺伝子のものだが、生長点培養処理が施された認定クローンである。トーレの畑に2.1エーカー植えていて、ルーステンにも植えようかと考えている。

4.ジャクソン・クローン
シエラ・フットヒルズにあるジャクソン実験農場のブドウ樹から1964年に採取された穂木を繁殖したもの。実験農場にブドウが植えられたのは1890年代である。非常に収量が低く、ワインの味わいに強さをもたらすクローンだが、樹勢が過剰にならないよう目を配る必要がある。

5.ショー・クローン
ショーの畑(現在は、グレン・エレンにあるクンデ・エステートが保有するワイルド・ウッドの畑)から、1939年にUCデイヴィスのオルモ教授が繁殖したもの。もともとのブドウ樹は1890年代の植樹。低収量で高品質。ただし、樹勢が強くなりすぎる場合がある。

6.シー・ランチ・クローン
ナパのオークヴィル地区に1969年に植えられたブドウ樹から繁殖されたもの。

7.最良のボルドー産クローン4種
フランスの認定育苗所(ENTAV)からのもので、タンニンの品質とアロマで選んだ。カリフォルニアでどう育つか楽しみである。

8.アルゼンチン産クローン
メンドーサに植わる古木から繁殖されたクローン。収量は平均的で、色とタンニンが豊富。

<カベルネ・フラン>
1.ENTAVからのボルドー産クローン2種
ひとつは堅牢な骨格のワインとなり、もうひとつはアロマに優れる。

2.古いイタリア産クローン
中庸の収量で、エレガントなワインとなる。

<シャルドネ>
1.マウント・エデン・クローン
ポール・マッソンが1890年代に、シャンパーニュで集めてきた穂木に由来すると考えられているクローン。

2.古いウェンテ・クローン
早熟。エレガントで複雑なワインとなる。

3.ソノマのロバート・ヤングの畑に植わる古木由来のクローン
酸のしっかりしたワインとなる。収量は低い。

4.ENTAVからのブルゴーニュ産クローン2種
ひとつは中庸の酸を持つ豊潤なワインとなる。もうひとつは比較的多産で、芳香豊かでエレガントなワインを生む。

クローンごとの品質を評価するために、それぞれを別個に発酵させるつもりである。比較試験は、ブドウの樹齢が高くなるまで長期間にわたって行う。結果が出るまでの間は、古くからカリフォルニアにあるクローン、すなわちラ・クエスタ、ファウンテングローヴ、ジャクソン、ショー、マウント・エデン、ウェンテを植える予定だ。他のクローンが、期待どおりに高品質を見せることになれば、最良のクローンを混ぜて植えることができるようになる。そうすれば、未だ残る過去に打ち捨てられたモンテベロの畑に再度ブドウを植えた結果、もっと複雑なワインが造れるようになり、多様な遺伝子をもつ畑にすることにもなる。

デイヴィッド・ゲイツ(栽培担当副社長)
2014年秋
2013年6月以前のコラムはこちらから