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連載コラム Vol.97
モンテベロ 2007 アッセンブリッジ その3
  Written by 立花 峰夫  
 
 さて、今回からは具体的なアッセンブリッジ(ブレンド)の手順について解説していく。以前にも述べたように、リッジにおけるモンテベロのアッセンブリッジは二度に分けて行なわれ、一度目(ファースト・アッセンブリッジ)が1月末から2月上旬に、二度目(セカンド・アッセンブリッジ)が5月上旬に行なわれるのが例年の流れである。一度目で大枠が決まり、二度目は仕上げといった感じだろうか。ファースト・アッセンブリッジのあとブレンドされた中間段階のワインは、三月に行なわれる先物売り(フューチャー)のタイミングで顧客に提示されている。

 アッセンブリッジが二度に分かれているのは、ファースト・アッセンブリッジの時期にはまだ、すべてのロット・区画のワインが「安定」しているわけではないからである。マロラクティック発酵がまだ終了していないロットや、澱から発生する「不快」な香りがついているロットが少数ながらあるのだ(後者については澱引きで通常解決する)。それらについては、ファースト・アッセンブリッジの段階ではブレンドに含めないようにし、5月に再度吟味する。品質は高いがあまりにタンニンが強いロット(最良のプレスワインなど)についても、生の卵白で清澄をしたのちに再び検討が加えられるのが常だ。

 さて、ファースト・アッセンブリッジで行なう大きな仕事は、すべての区画・ロットのワインをテイスティングし、優れた品質やモンテベロらしい個性を有するものを選び出すことだ。テイスティングに参加するのは7名から10名。総帥ポール・ドレーパー、エリック・バウアー(モンテベロ・ワイナリーの醸造責任者)、ジョン・オルニー(リットン・スプリングス・ワイナリーの醸造責任者)、デヴィッド・ゲイツ(栽培責任者)、および彼らのアシスタントといった面々である。

 試飲は常にブラインドで行なわれ、参加者はそれぞれ自分の好みのワインと好みでないワインを選んでいく。適切な判断をするためには、グループでの試飲が極めて重要、というのがドレーパーの信条だ。「自分の試飲判断は、全体像の一部を占めるに過ぎないと考えている。理想的なのは、沢山の人間が試飲に参加することだ。誰もが率直に自分の意見を語り、一人だけ異を唱える状況になるのも恐れないこと。そうすれば、熟練したチームの下す判断は、いかなる個人の判断よりも優れたものとなるように思う。また、ブラインドで試飲すれば、それぞれの区画についての過去の経験・記憶に左右されることがない」。実際、ポール・ドレーパーの意見・評価がほかの全員と異なっていて、議論の末に彼が譲るような場面もある。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。