Archives
連載コラム Vol.91
リッジの「遺産」的ブドウ畑
  Written by デヴィッド・ゲイツ  
 
 カリフォルニアの「遺産」というべきワイン――ジンファンデルに、リッジでは常に関心がもたれてきた。われわれが扱っている歴史あるジンファンデルの畑、そこから生まれる卓越したワインが仮になかったとしたら、リッジは今もカベルネのワイナリーとして主に知られているであろう。そう、1960年代半ばにそうだったように。1990年代、ガイザーヴィルにあるウィットン農園と長期のリース契約を結んだとき、異なるジンファンデルのセレクションを実験的に植えつけることができる最適な場所を、われわれはようやく手にした。歴史ある最高のブドウ畑から穂木を集め、その遺伝子を未来に伝えていきたいと考えたし、われわれが造るガイザーヴィルのワインで、さらに品質の高い果実を使えるようになるチャンスだとも捉えていた。まずは、三種類のフィールド・セレクション(マッサル選抜の穂木)が選ばれ、植え付けられた。(1)ピケッティ:モンテベロの山に19世紀に植えられたブドウ樹。(2)メンドシーノ:アンダーソン・ヴァレー地区の北の丘陵地に位置し、同じぐらい古いデュ・プラットの畑で選抜されたもの。(3)ハーツ・デザイア:ウィットン農園の中にある、「オールド・パッチ(古い区画)」のジンファンデルで、1880年代に植えられたもの。

リットン・スプリングの畑を購入(イーストが1991年、ウェストが1995年)したことによって、実験農園に使用できる土地がさらに増え、研究対象の古いフィールド・セレクションがもうひとつ加わった。Cワイン・クリーク:ドライ・クリーク地区の北にあるブラッドフォード山のブドウ畑跡で選抜されたもの、である。

新しく利用できるようになった、こうしたフィールド・セレクションの品質には満足しているものの、ほかにもタイプの異なるブドウがまだあって、われわれのワインをさらに興味深く、複雑にしてくれる可能性は残っている。そう考えたわれわれは、最近9種の異なるジンファンデルのセレクションを畑に植え、実験を始めた。上述の4種に、ソノマ郡にある古い畑から3種類のセレクションを加えたのである。畑の名前をそれぞれ挙げると、クローヴァーデールの近くにあるセント・ピーターズ・チャーチの畑、ドライ・クリーク地区にあるテルデスキの畑、ソノマ・ヴァレー地区の北にあるモンテ・ロッソの畑である。南イタリアのバリで選抜したプリミティーヴォ種(遺伝的にはジンファンデルと同一)も植え、また比較対象のために、デイヴィス校の植物検疫基金が選抜したジンファンデルのクローン03も植えた。この実験の一部は、カリフォルニア大学でブドウ栽培学の公開講座を担当する専門家、ロンダ・スミス女史との共同研究だ。女史は、それぞれのセレクションの生育状況と果実の性質について記録を取っている。この先、それぞれのセレクションがもつブドウ栽培学的な差異について、女史は解き明かしてくれることだろう。そして当然のことだが、こうしたセレクションから醸造したワインは、その違いがわかるように別々に管理されている。ワインの差を知ることこそが、そもそもこの実験の目的なのだから!

いつものように、リッジでは実験を通じての品質向上を心がけているが、その一方で、われわれの伝統である自然かつ非工業的なワイン造りへの敬意も忘れてはいない。ジンファンデルの実験によって、われわれのブドウ樹、そしてワインはさらに多様で複雑なものになるだろう。今も、そしてこれからも。

Archives
 デヴィッド・ゲイツ
 リッジ・ヴィンヤーズ副社長/栽培責任者