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連載コラム Vol.84
2007 ハーヴェスト・レポート No.3
  Written by 立花 峰夫  
 
 波乱含みだった今年のハーヴェストもようやく終了した。前回に引き続き、現地で働く黒川信治氏のレポート(11月10日付け)をお届けする。摘み取りは終わったが、これからも発酵や樽熟成、ブレンドといったワイン造りが連綿と続いていく。

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 10月29日にまた雨が降った。結果的に9月下旬から約10日サイクルで雨を記録したことになる。こんな年は無かったのではないか。幸いにして今回の雨は量も時間も非常に少なかったため、1日休んで収穫を再開することが出来た。また、幸いなことにしばらく晴天が続くという予報であった。その予報を信頼して、あせることなく慎重に畑を選び、順番に一日2区画程度をゆっくりとしたペースで収穫を進めていった。

 そして、11月8日に最後のキャンプヒルとバックヒルのグリーンとオールドヴァインが収穫され、記録的に長かった2007年のハーヴェストを締めくくった。11月8日というのは過去の記録の中でも遅い方である(1993年から2007年のデータでは、1998年の11月16日が最も遅く、1996年の11月11日が第2位、2007年はそれに次ぐ第3位)。

 それでは2007年のブドウやワインはどうかというと、何回かの雨を記録したシーズンであったが、結果的には非常に良好であった。早いシーズンのスタートで雨が降り始める前にほとんどの収穫を終えることが出来たジンファンデルは、今年も素晴らしいものになっていた。また、雨に多少降られたシャルドネは、幸いにしてベトやウドンコ病などの病気がでることもなく質・量ともに良好な結果となった。また、メルローはカベルネに比べ熟成のタイミングがやや早いことで雨の影響を受けた畑は少なく、非常に濃厚なできとなっている。そして、雨の影響を受け一番心配されたカベルネは、10月下旬から11月初旬に数回訪れたインディアンサマーのお陰で無事完熟することができた。わずかの畑では、葉を落としてしまいブドウの実だけが樹になっている状態のものもあり、ブドウの樹自体の活動が終わってしまったところもあった。それら数箇所の畑を除くと前回も書いたようにしっかりした風味と色のブドウとなっており、全体としての出来は非常に良好であった。 まだタンクで発酵が続いているため、油断は禁物であるが、山火事や異例の雨、地震とユニークな出来事が多かった2007年のハーヴェストも葡萄園では無事幕を下ろすことが出来た。

 そして、ワインは休むことなく2次発酵から熟成という新たなステージに移っている。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。