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連載コラム Vol.83
2007 ハーヴェスト・レポート No.2
  Written by 立花 峰夫  
 
 10月8日には、最後のシャルドネとパガニ・ランチのブドウが収穫され、残すはモンテベロのボルドー品種のみとなった。早いスタートだったジンファンデルは総じて良い出来、シャルドネも期待できそうなブドウが収穫できている。しかし、10月9日夜から12日にかけて、またもやまとまった雨が降ってしまい、その後も2、3日置きに小雨がぱらつく天気が続いてしまった。雨が降ると一旦ブドウは水っぽくなるが、数日すると回復してくる。この回復のペースが畑毎に異なり、また次の雨によってペースが乱されたりもするから、10月後半はひたすらサンプリングにあけくれる日々が続いた。

 以下は、現在もリッジで奮闘を続けている日本人醸造家、黒川信治氏からのレポートである。

「9月22日の雨のあと、晴れた日が4日間続き、26日より収穫を再開した。その間、毎日のように畑へサンプリングに行き、回復状況を確認する。『良し、これなら』となっての再開である。
 しかし、収穫を再開してしばらくたった頃の10月8日から11日にかけて、再び雨が数回に渡って降ってしまう。2007年はカリフォルニアにしては異例のヴィンテージで、秋の天候に敏感になっているワイナリー関係者以外の人々も、『今年の天気はおかしい』と口を揃える。
 この雨の影響で、収穫はふたたびストップ、またサンプリングの日々が続くことになった。精神的にも肉体的にもワイナリーの面々は疲れがピークになってきていて、体調を崩す者も出始める。ようやく、本格的に収穫が再開出来たのが10月22日。22日に収穫されたプティ・ヴェルドとカベルネ・フランは、糖度は若干低めではあったものの、いつになく複雑なフレーバーののったブドウであった。
 22日に摘まれたブドウの発酵が始まり、いつものようにタンクを回ってテースティングしているとき、モンテベロ・ワイナリーの醸造責任者、エリック・バウアーから、「今年も、モンテベロが造れそうだ」という嬉しい言葉がでる。この一言が、皆に元気をとり戻させてくれた。実のところ、9月下旬から10月中旬頃には、「もしかしてモンテベロが造れないのではないか」という禁句が、度々話題にあがることがあったのだ。
 この最先良い滑り出しを受け継ぐかのように、再開後に収穫されたブドウは、どれもフレーバーがしっかりしていた。雨の前に収穫されたものも含めて、2007年のひとつの傾向と言えるだろう。8月までの生育期が非常に順調であったことが、しっかりしたフレーバーをもたらす要因であろうと考えている。幸いなことに、10月23日から24日にかけては待望のインディアサマーが訪れ、気温が27℃、30℃と上がってくれた。おかげでブドウの糖度は回復し、しっかりと熟した果実になってきている。
 ユニークな過程で進んできた2007年も、結果的には良いヴィンテージになってくれそうな気配が見えてきた。いい形でフィニッシュできることを願いつつ、もうしばらくは、畑と気象図から目が話せない日々が続くだろう」

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。