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連載コラム Vol.79
リットン・スプリングス小史 その4
  Written by デヴィッド・ゲイツ  
 
第三部 畑の統合と稲藁ブロックのワイナリー(つづき)
 リットン・エステート・ウェストの畑を購入したあと、次にリットン・スプリング・ワイナリーを改装しなければならないのは明らかであった。地下水位が高く地下にセラーを掘ることが不可能だったため、ポールは地上にセラーを築くことに決める。建材には稲藁のブロックを使い、周辺で採取した土をしっくいにして塗った。この世界最大の藁ブロックの建築物は、三段階に分けて建てられ、(自然な成り行きだが)4年以上が費やされた。建築中も、訪問客の受け入れやワイン造りはもちろん続けている。美しい新生リットン・スプリングス・ワイナリーは、環境に易しく、使用電力の4分の3を太陽光発電で賄うことができる。このワイナリーは、周囲を取り囲む古木のブドウ樹と共通点が多い。両者の共生関係と土地への結びつきこそが、リットン・スプリングスで造られるワインの精髄なのだ。なおかつ、そのワインは味もよいというのだから。

デヴィッド・ゲイツの選ぶリットン・スプリングス: 1991
 現時点において、私のお気に入りのリットンのヴィンテージは1991年である。このワインは若いうちハッとするほどゴージャスだったが、その後優雅に熟成してきている。このワインは、美しいバランス、深み、複雑性がひとつになった類い稀な逸品で、甘く熟したブラックベリーの桁外れな風味によってさらに高い次元に達している。

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 デヴィッド・ゲイツ
 リッジ・ヴィンヤーズ副社長/栽培責任者