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連載コラム Vol.72
ドレーパー来る!
  Written by 立花 峰夫  
 
 少しレポートが遅くなってしまったが、2007年3月下旬に、リッジの最高醸造責任者兼CEOのポール・ドレーパーが来日した。前回日本にきたのが2000年だから、7年ぶりとなる。パリ対決30周年記念テイスティングでの大勝利のあととあって、市場の関心は高く、熱狂的な歓迎がなされた。日本には約2週間滞在し、東京、大阪、徳島ほかの各都市をまわっている。

 1936年3月の生まれだから、71歳になったばかり。しかし、年齢をまったく感じさせないほど、毎日精力的にスケジュールをこなし、よく食べ、そして飲んだ。元気な人である。東京、大阪では、ワイン業界関係者や一般のワイン愛好家を対象とした、ワインセミナーを行なった。インタヴューの際にもいつもそうだが、話し出すととまらない。いずれのセミナーでも、2時間の予定時間を40?50分超過して話し続け、「そろそろ終わらないと……」と催促をして、やっと締められたほどであった。聴衆から「よい質問」が出ると、10分、20分とその話題で答え続ける。セミナーの主題は毎回同じなのに、具体的に話す内容はその都度かなり違う。「今までにまったく同じ話を二度したことはない」と、本人が常々語っている通りであった。

 セミナーのテーマは、今日本でも大ブームとなっている「自然なワイン造り」の哲学について。生産者のセミナーにありがちな、自分のワイナリー/ワインの単なるPRではなく、まさに「哲学」というべき深い次元の話をしてくれた。とにかくドレーパーは話がうまい。セミナーでは筆者が通訳を務めたのだが、何度も同じテーマについて話をきいている筆者でも、ついその語りに引き込まれてしまう。仕事を忘れて、自分が聞き入ってしまう瞬間もしばしばあった。セミナーで試飲したワインは、シャルドネ・モンテベロ、ガイザーヴィル、リットン・スプリングス、モンテベロ赤ほか。彼の「哲学」を具現化したものとして、これらのワインもまた大いに「語って」くれていた。

 次回以降数回にわけて、ドレーパーが来日セミナーで話してくれた興味深いトピックを取り上げる。乞うご期待である。

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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。