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連載コラム Vol.71

あなたの好きなガイザーヴィルは?

 
1989年 デイヴィッド・ゲイツ(栽培責任者)
  私の好きなガイザーヴィルのヴィンテージは1989年です(私がリッジに来て、はじめて収穫作業に関わったのがこの年なのです)。この年は9月の半ばに雨が降り、ジンファンデルとカリニャンの若木のブドウが希釈を起こしてしまいました。しかし、オールド・パッチの区画に植わる古木とプティ・シラーについては、雨の前に収穫できたのです。雨が来る前に収穫したブドウだけを使ったため、出来上がったガイザーヴィルは骨格、持続性、そして快活な酸味を備えた優れたワインになりました。たとえ自然が親切にしてくれなかった時でも、優れた場所に植わる古木のブドウ樹は、深みと複雑性をもつワインを生み出してくれる――この年にはこの事実を再認識することができました。

1993年 ジョン・オルニー(リットン・スプリング・ワイナリー 醸造責任者)
  私の好きなガイザーヴィルは1993年で、結婚式のときにもこのワインを選びました。グラスの中から飛び出して、五感をわしづかみにするワインとはこういうものでしょう。私は毎日のようにワインを試飲しながら、次のように自問しています。酸味はちょうどいいだろうか? タンニンは十分柔らかいだろうか? 何か別の手はないだろうか?……しかし、93年のガイザーヴィルについては、あとから改善を考える余地がないのです。グラスに注ぐと、すぐにその純粋さが現れます。しかしそのあとも、何度もなく新しい姿を見せてくれ、ゆっくりと己を開いていくのです。果実味、渋味、酸味など、あらゆる要素がぴたりとしかるべき場所に収まっています。このワインは、人があれこれ画策して創りだそうとしても、決して生まれないものでしょう。私たちが自分の力だけでは夢にすら見られないようなワインを、自然が生み出してくれたのです。

1995年 カレン・シュミット(モンテベロ・ワイナリー ラブ・ディレクター)
  1995年のガイザーヴィルには強烈なラズベリー風味があり、比較的プティ・シラーの比率が高いために、複雑で骨格のしっかりとしたワインになっています。デキャンティングをすると、コーヒーや土、燻製香、かすかなミント風味といった香りがでてきます。口に含むとタンニンはエレガントでビロードのよう、スパイシーなオーク風味を持つ豊醇で甘美なワインです。濃厚で魅惑的な1995年のガイザーヴィルは、今も私のお気に入りです。

1996年 デイヴィッド・テイト(モンテベロ・ワイナリー アシスタント・ワインメーカー)
  過去のガイザーヴィルのヴィンテージの中で、私の好きなもののひとつが1996年です。このヴィンテージは、低収量からくる風味の凝縮を如実に示してくれています。とはいっても、「果実味の爆弾」というわけではなく、層を成したような複雑な構造をもつ柔らかいワインなのです。香りには、ミントやバラの実のようなフレッシュなニュアンスや、イチジクやラズベリーのような果実が感じられます。ガイザーヴィルの精髄ともいえる砂利を思わせるミネラル風味が、デリケートな芳香を支えているのです。タンニンはとても柔らかく、快活な酸味がフレッシュな香りの印象を強めてくれています。現在このワインは絶頂にあって、十年たったガイザーヴィルがどれほど優れたワインになるかを見事に示しています。

2003年 エリック・ボーハー(モンテベロ・ワイナリー 醸造責任者)
  私が楽しんできたガイザーヴィルを昔から振り返ってみると、生育期間の開始が遅れ、収穫が遅くなった年が群を抜いているように思われます。こうした年、具体的にいうと1993年、1995年、1999年、2003年、2005年はすべて、ブドウの生育条件に共通点があり、ワインは並外れて色が濃くリッチなものになりました。2003年はその好例です。この典型的なヴィンテージには、砂利のようなミネラルの個性が特にくっきりと感じられ、強いブラック・チェリーやプラムの果実風味も備わっています。2003年のガイザーヴィルは、私のもうひとつのお気に入りの1995年と同じようなパターンで、これから熟成していくように思います。

 
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