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連載コラム Vol.69

ガイザーヴィル 1966-2006
土地の個性を表現した偉大なワインと単一畑の40年を祝う その2

  Written by ポール・ドレーパー  
 
  1990年にリッジは、トレンタデューの畑のうちウィットン農園について、32年のリース契約を結んだ(ちなみに、「32年」とはイタリア語で「トレンタデュー・アニ」という)。ウィットン農園は、ガイザーヴィルのワインにおいて最も重要な区画で、主原料となるブドウを供給してくれている。1991年、リッジは約半分のブドウ樹を引き抜いたのだが、それらは質の劣る品種の樹であり、もともと植わっていたジンファンデルに取って代わられた。1870年に最初にジンファンデルを植えたのは、ルター・バーバンクの知人であるアンドリュー・ボタンであった。植え替えられた区画には、19世紀以来のジンファンデルの古木から選抜されたフィールド・セレクションの樹が用いられている。ハーツ・デザイヤー、ピケッティ、メンドシーノの三種である。昔ながらのジンファンデルと同じように、新しく植えられた樹も、凝縮した果実を生むゴブレ剪定で仕立てられている。ハーツ・デザイヤーのセレクションは、典型的なガイザーヴィルの個性??いきいきとしたチェリー風味、まろやかでエレガントな骨格、軽やかなミント風味といった特徴を示す。ピケッティのセレクション(モンテベロの山にあるピケッティの畑から採取された)は、近くにあるジムソメアの畑とそっくりのワインを生むので、我々は同じ樹が植わっているのだろうと信じている。堅牢な骨格と強い酸味、ブラック・チェリーと胡椒、甘草、ミネラルのアクセントなどが特徴である。三つめのセレクションは、19世紀に植えられたメンドシーノ郡の畑で採取されたものである。色が濃くエキゾチックな風味を備えており、三つの中でもっともバランスがよく飲みやすいことが多い。この三つを組み合わせると、どれか一つだけを使ったワインよりもうんと複雑性が高まるのである。

  植え替えられたウィットン農園の樹も今では成木となってはいるが、もっと樹齢の高い樹のブドウとブレンドされ、バランスがとられている。1965年にトレンタデュー一族が植えたジンファンデルは9エーカーあり、ハーツ・デザイヤーのセレクションが用いられた。収量が自然に抑えられるようにゴブレで仕立てられ、植樹間隔は8フィート×12フィートという広いもの、セント・ジョージの台木が使われている。この9エーカーからは、平均して25トンのブドウが収穫され、4つか5つの小型発酵タンクに分けて仕込めるだけの量がある。農園の入り口付近にある3エーカーの区画は、残りの区画とは分けて仕込むようにする。二つの区画は、わずかに異なる風味をもつワインを生むからだ。入り口付近の区画のワインは、しばしば硬くいかめしく、スパイシーなものになる。一方、中央部の区画はもっと柔らかくリッチなワインとなる。この樹齢40年の区画のブドウが、ガイザーヴィルに深みと滑らかなタンニン、古木特有のスパイス風味を与えてくれるのだ。

 
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 ポール・ドレーパー
 リッジ・ヴィンヤーズCEO、最高醸造責任者