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連載コラム Vol.61
2006 ハーヴェスト・レポート No.3
  Written by 立花 峰夫  
 
 10月4日から5日にかけて、まさかの雨に見舞われたカリフォルニアだったが、その後天候は回復し、15日頃から好天の中で最終収穫が順次行われている。本稿執筆時点(10月27日)でモンテベロの葡萄はすべて摘み取りが完了し、あとはソノマのポンゾの畑(ジンファンデル)を残すのみとなった。

 収穫量については、モンテベロのボルドー品種はやや多め、ジンファンデルは平年並だという。ボルドー品種の多めの収量は、春の雨が原因だと推測されているが、品質上の影響はない模様。モンテベロは、素晴らしかった昨年と同水準の出来が期待でき、畑によって異なるが、1997年および1996年とスタイルの類似があるという。ジンファンデルも質は高く、1995年に似ているらしい。

 醸造中に見られた今年の特色としては、赤ワインの抽出スピードが早かったこと、フレーバーが豊かで色が非常に濃かったことがあげられる。モンテベロの一区画のワインでは、抽出されたタンニン量があまりに多すぎたため、年明けのアッセンブリッジ(ブレンド)を待たずに他のタンクのワインに混ぜるという異例の事態も起きている。そのままにしておくと、タンニンが重合して沈殿してしまい、折角得られた強靭なストラクチャーが失われかねないからだという。力強く濃厚なモンテベロが、今年は生まれそうではないか。

 毎年秋、現地で醸造チームに加わる大塚食品の黒川信治氏にとっては、7回目のハーヴェストとなった(このレポートは、彼の提供情報に基づいている)。今年黒川氏は収穫作業中に、イエロージェケットという小型のスズメバチに前腕部の肉を齧られたそうだ。除梗破砕機の回りには、葡萄の甘い「蜜」に誘われて、いつも大量の蜂がむらがっている。収穫作業は厳しく危険に満ちた肉体労働なのだ。

 しかし、波乱に満ちた今年のシーズンももう終わる。既に葉が黄色くなっている葡萄樹も見られ、10月28日には、毎年のお楽しみ、ワイナリー関係者による盛大なハーヴェスト・パーティが予定されている(その後も発酵管理など仕込み作業は続くのだが)。モンテベロ・ワイナリーの醸造チームは26日、成功裏に終わったシーズンを祝して、シャンパーニュで乾杯をした。これからワイナリーは、ゆっくりと時間の流れる冬へと向かう。
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 立花 峰夫
 フリーのワインライター/翻訳者。
 2003年ヴィンテージには、リッジ・ヴィンヤーズの研修生
  として醸造を経験。